海水を50リットル飲めば人は死ぬ

東京電力は26日、福島第一原子力発電所近くで25日朝に採取した海水から、
最大で安全基準の1250.8倍にあたる濃度の放射性物質が検出された、と発表した。

東電によると、25日午前8時半に第一原発の放水口から約330メートル南側の海岸沿いで
0.5リットルの海水を採取して調べたところ、ヨウ素131が原子炉等規制法が定める基準の1250.8倍、検出された。
21日午後2時半のときの10倍に跳ね上がった。これまで1日1回だった測定を2回に増やして監視を強化する。

 今朝方、起き抜けにテレビをつけると東大病院の中川氏という方が「仮にこの海水を50リットル飲んでも大丈夫です」云々という話をされていました。


 いや、放射性物質がゼロでも海水50リットルも飲めば死にますから…


 と、寝ぼけ眼で突っ込み。
 塩分だけ考えてみても、海水1リットルあたりの塩分量は32〜35g*1。少なめに見て50リットルの海水には1600gの塩分が入っています。
 食塩のLD50*2は3000〜3500mg/kgで、体重50kgの人で150〜175gに相当します。体重が500kgも無い限り、一日に1600gの食塩を摂取すればまず死ぬはずですね。
 突っ込みどころはここじゃない気もしますが…

*1:海水の塩分濃度は32から35‰

*2:半数致死量。50% Lethal Doseの略。

穢れ

 うどんの食べ方で私が密かに「お嬢様食べ」と呼んでいるものがあります。それはうどんを一本ずつ箸で取り、ずずずっと一本の終わりまで啜りこむ食べ方(笑)
 おちょぼ口で、どうやっても早くは食べられないやり方でありまして、何人かそういう人を見てきたのですが、何か「お上品ぶって」やってるんじゃあ…という偏見ももっていました。それらしい女の子ばっかりだったですし。


 ところがある時それは間違いだと、偏見だと言ってきた子がおりまして、よくよく聞いてみると彼女的には「口で噛み切ったうどんがつゆの中に戻るのはきたならしい…」という感覚でお嬢様食べをしているんだと言うのです。
 でもそれじゃあ潔癖すぎるんじゃないかと思ったわけです。そばは一気啜りでも良いとして、ラーメン類は?スパゲティなど他の麺類は?それに自分で口をつけたのが(出汁に戻って)穢く思えるくらいなら、他のいろんな食事の場面で困るんじゃないかと。
 その人は、ラーメンでは気にならないとか、やっぱり採り箸がないと気になってたまらないとかいろいろ言っていましたが、結局そういう穢れ感覚は人それぞれなんだなということにつきるのかもしれません。それでなんとなく納得しています。(実際このお嬢様食べをラーメンでしている人も目撃しました)


 きれい−きたないの対立軸は相当人の行動に影響するものですが、案外ふとしたところでユニークな個人性を見せ、集団(社会)の中で浮いたもりするものなんでしょう。ちょっといや、とかいう程度の感覚であれば見過ごせますが、絶対生理的に受け付けないという「穢れ」感覚で合わずに彼氏(彼女)と別れたなんていう話も普通にありますね。


 さて穢れ(ケガレ)は*1、基本的にはこの民族社会において「生と対立する死へのイメージを呼び起こすもの」としてあると思います。穢れはこの世の中において(繰り返し)生産され続けるものであり、「不潔・危険・強力・感染性」などの特質を持って何らかの形で祓へ遣る(ハラヘヤル)必要があるものとして存在すると。確か鳥インフルエンザのことをネタにそんなことを書いたこともあったはず。


 この頃思うのは、放射線の「穢れ」をどこまで怖がるかということへのまとまらなさと言いますか、極端に怖がる人がいるわりに、ずぶとく構える人(含自分)も結構いるなあということです。これは必ずしも放射線に対する知識の多寡によって分けられるものでもなさそうな…
 でも自分から見れば放射線放射性物質)に怯えすぎる、そこに死のイメージを過剰に捉えすぎるのは何だかなあという感じもあります。それは原水爆などとの重ね合わせから来ているんじゃないかと、密かにそう見えます。逆から見ればこちらの方が鈍感で阿呆ということにもなるのかもしれませんが、一応ここは落ち着け、大丈夫だと言っている専門家諸氏の話を信じたいんですけどね。
 

追記

 なんで自分の中で放射線の死のイメージが比較的小さいのか考えていて、今ちょっと気づいたのですが、最先端医療と言われるものには放射線の利用がほとんど不可欠…っていう認識があったからじゃないかと思えてきました。死のイメージと同時に生のイメージも自分の中では共存していて、一方的には見られないといいますか。つまりは諸刃の剣みたいなイメージ…

*1:最古層を考えれば「気枯れ」につながるものでしょうが

「こころのケア」ボランティアについての注意事項

 これも中越地震の時、新潟県がまとめた「こころのケア」ボランティアについての注意事項です。善意の活動ではあっても、災害心理についての知識がなく却って被災者の方々の症状を悪化させては本末転倒だということで…

1 被災者に震災の時の様子などを無理に話させることは避けてください。

 被災者が話したい話を丁寧に聞いていただくことは、被災者の心を和ら
げる場合が多いのですが、話したくないのに話させることは、震災のとき
の恐怖や不安が強まり精神的に不安定になるおそれがあります。


2 ボランティアの方は、持参したお薬や栄養剤などを、被災者に渡さない
ようにして下さい。お薬については適切な用法・用量に基づく服用の必要
から、県から派遣した医療チームが処方します。


3 不安で夜眠れない、食欲がない、気持ちの落ち込みが激しい、不安で
落ち着かない、体の調子が悪いなどの症状がある人などについては、医療
機関や「こころのケアチーム」等の専門家にまかせてください。ボラン
ティアだけで対応しないようにして下さい。


4 被災者の話を聞くことで、ボランティアの方自身が動揺したり、精神的
に不安定になることもあります。また、がんばりすぎて疲れてしまうことも
あるので、自分自身の健康に注意し、休養を心がけてください。


5 被災者の方々は、相手が善意であっても自分の意に添わない支援は当然
断ることが出来るということを念頭に置いて活動してください。

 ということで、今日は受け売りなんですが、自分が避難されてきた方々とお会いするときのために何か心がけるための覚書です。

まず自分のストレスを和らげる

 以下は武蔵野大学人間関係学部の大山みち子さんが中越地震の際にお書きになったものの抜粋です。

<人と接するストレス>

 今回の地震のような出来事では、さまざまな立場の人と接することが多く
おありと思います。そうした人々は頼りになり、人と会うことが気持ちの
張りを与えてくれる一方で、たくさんの人と接することは、それだけでも
ストレスになりがちです。

 団体旅行や披露宴などで後からどっと疲れたことがおありでしょう。うれ
しいこと、計画していたことでもストレスになります。楽しいことでも、
知らず知らず周囲に気を遣っているはずです。大変なことや思いがけない
ことで人と会うのであれば、なおさらです。

 まずは、人といるだけでも疲れることを前提にお考えください。心の不思
議な現象として、楽になれると同時に疲れるということも、しばしばある
ことです。また、ずっと一人きりでいるのはよくありませんが、人といる
のに孤独を感じるのもよくありません。


<疲れている時のサイン>

 人とのやりとりで、相手の話が入ってこない感じがしたことはないでしょうか。
「少し休んだら?」「働きすぎだよ」などといわれて、「無理だよ」「わか
ってないなあ」と感じたり、むっとしたら、少し休むことをお勧めします。
休めないからといって休まないと、後が続かなくなるかもしれません。少し
涙もろくなったり、ひがみっぽくなったりするのは、疲れている時は誰に
でもありますが、いつもの自分らしい判断ができなくなると、後々の仕事や
大切な人との関わりに差し支えることがありますので早めに対処しましょう。


<休むヒント>
 身近な小さなことが、自分を助けてくれることがあります。たとえばこん
なことが役に立つかもしれません。どれも今は難しいかもしれませんが、
できるだけ取り入れてください。自分の体をいたわる、自分をかわいがる
ことは何でもけっこうです。たとえば…


・きれいなものを見る〜雑誌や写真などでも、きれいな色や形のものを見つけて…
・やわらかいものに触れる〜書類や段ボールだけ触るのではなく…
・横になる〜眠れなくても、少しでも…姿勢が変わるだけでも…
・暖かいものを飲む〜お茶やコーヒーを入れるといった仕事もゆっくりていねいに…
・ストレッチをする〜体の筋をゆっくり伸ばして…
・ヘアブラッシング・頭皮のマッサージをゆっくり…頭に血が上りがちです。
いつもと別の分け目でていねいにすると血行がよくなり効果的…
・ ひとりの時間を確保する〜トイレの個室などの時間は大切に…

お酒の放射線防護効果

 ネビル・シュートの『渚にて』が強く頭にあったのですが、アルコール飲料の飲用でいくらかの放射線防護効果があるという話。チェルノブイリの事故の際もどこかでニュースになっていた記憶が。
 SF小説だけでなく他にも話は聞いていたはず、と思ってPubmedで alcoholic beverage[mh]とかと組み合わせてちょこちょこ探してみたのですがうまく見つかりませんでした(笑)
 そしてふと気づくと、ギズモードジャパンの記事()で似たようなことが話題になっていました。同じような状況で同じようなことを思いつく人はいるものだなと…。先を越されてしまいました。


 元ネタは次のプレスリリースですね。
 ビール成分に放射線防護効果を確認(放医研・東京理科大の研究チームがヒトの血液細胞とマウス実験で実証 放射線防護効果は最大34%にも)


 今日はビールを買って帰りましょう。皆が買いだめに走らないうちに…

買いだめについて

 今現在の被災地外での品不足。もちろん工場が壊れたり、燃料不足で流通が滞ったりという実際面での影響もあるでしょう。でも結構な割合で集団的な「買いだめ」による一時的な現象ということもあるのではないかと感じます。


 この「買いだめ」などがどうしてここに現れてくるかですが、私は非常時の不安心理が為せるわざであろうと考えます。まず一つには「漠然とした不安を解消するため」に(何か)形あるものを購入して手元に置きたいという心理。そしてそれで少しでも安心を得ようというような(心理学的な)補償行為がそこに考えられるでしょう。
 実際に災害時に必ずしも必要ではない(というか優先度が低そうな)トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの不急の品も不足しているというところに、この「買いだめ」が必ずしも合理的な行動ではない証左が現れているのではないかと思います。
 もちろん無くて困るものも品不足になったりしているでしょうが、必要性という理由と同時に安心を得たいという理由、合理的な理由と非合理な理由が、同時に買いだめによる品不足を現象させているのでしょう。いくつかの記事やブログなどで「買いだめ」を読み解こうとする記事を読ませていただきましたが、合理的に説明しようとするだけではやはり捉えきれないんじゃないかと感じました。
 逆にこの不安心理が影響している部分は、遅かれ速かれ不安の解消がやってきたときに雲散するものと思われます。ですからここは理性的に(無理にでも考えて)自分は買いだめしない、という選択をできるだけ多くの方がしておけばいいはずです。


 またガソリン不足の方では、もちろん実際に供給が減っていたという部分も大きいのですが、ここにはあのよく知られた「コップに水が半分入っています…」というお話、あれで「コップに水が半分しか入っていないぞ」と思えてしまった人がガソリンスタンドの行列を一層長いものにしてしまっているという側面があると思います。
 こちらも不安心理が為せるわざであるでしょう。たとえば自分の車のタンクに油が半分ほどの時、通常時ならば「もう入れなくては」と思う人は決して多くないはずです。むしろ満タンに近いほど燃費が悪いから、少量ずつしか入れないという人も結構知っています。ところが非常時で、いくつかのスタンドが欠品しているのを見せられたりした人が、「タンクにガソリンが半分しか入っていない!」と不安に駆られ、ほんの一、二週も待てば少しずつ回ってくるはずの油を待ちきれず、とにかく満タンに、それができなくてもとりあえず入れられるだけ入れておきたい…と思ってしまったのが、あの長蛇の列を生み出してしまったのではないかと思うのです。比較的小さな地方都市に車が5万台あったとして、それぞれが10リットルでも普段より多くガソリンを入れて走らせたら、それだけで50万リットル余計に必要となるわけです。普段ならスタンドに備蓄しておけるはずの現物が、不安心理で一気に無くなってしまうのですからそれはもうパニックに近くなるのも当然です。


 どちらも、結局「不安を何とか解消したい」ということで自助努力に走った人びとが、回り回って自分たちの首を絞めている行為ではないかと考えています。いずれ不足したものが出てくれば、あっという間に問題は解決するでしょう。そしてまた余裕が出てきた時に、何が問題だったか冷静に再考してもらいたいものだと思います。


 ちなみに連休は自家用車を使わずに(結構歩きました)、今売れないものをターゲットに、(小市民的な意味で)豪遊させていただきました。明日からまた仕事ですが、できるだけ自分は冷静に(品不足の解消を)待っていようと思っています。

水回り部分復旧

 地震から一週間、信じられないくらいの人が亡くなり、多くの人が不安と欠乏の中で避難しています。被災者の方々、どうかがんばってください。
 うちは昨日水回りの部分復旧にこぎ着けました。家はまだ傾いていますが、とりあえず人心地つきました。トイレと給水のために車を出すのがそろそろ(ガソリンが少なく)限界に来ていたので胸をなで下ろした感じです。
 この連休中には、近くに少なくない人数が福島から避難して来られるそうです。できる限りのことはさせていただこうと思います。


 ただ、連休中は何か遊ぼうと思っています。息抜きします。
 災害を理由にそれとなく他の人の遊び・楽しみを咎める風潮は個人的に好きではありません。
 共倒れにならなくても共苦共感はできるはずです。
 とりあえずぱあーっとお金を使ってきます。それが回れば被災者への援助もきっと右肩上がりになるかも。身をすくませているだけではじり貧ですよね。