タイ王国の憲法

 西暦1978年に公布されたタイ王國憲法(←リンク)を見てみましたが、立憲君主国とはいえ現在の日本とこれだけ違うのですね。(リンク先にも注がありますが、現行の憲法はこの22年後の西暦2000年に公布されたものとのこと)
 少し前までクー・デターの多い国とは思っていましたが、これだけ国王に実権が残されていると軍もやってみたくなるでしょうし、あるいは王の意向でのクー・デターも多いのかもしれません。


ちょっと抜粋させていただきます

タイ王國憲法

前文


国王 仏暦2521年年12月22日御印玉璽(西暦1978年)


プラバート・ソムデット・プラチャーゥ・ユーフゥア・プーミポン・アドゥンヤデート・マハーラート国王は次のように布告する。

歴代憲法間の重要な相違点はその時々の変化する国家状況に適合さすために、国会の地位、および立法権と行政権との関係が変わったにすぎない。

国王の意向のごとく、民主主義と王国内のタイ国民の主権とを維持し、国王の統治に服する人民に幸福と繁栄とをもたらすため、 タイ国民は心をひとつにし、このタイ王国憲法を守り維持しなければならない。



第一章 総則
(第1条)
タイ国は一体不可分の王国である。


(第2条)
タイ国は国王を元首とする民主主義体制の統治政体をもつ。


(第3条)
主権はタイ国民に由来する。元首である国王は本憲法の規定に従い国会、内閣、裁判所を通じてこの主権を行使する。



第二章 国王
(第6条)
国王は尊敬すべき地位にあり、何人も侵すことはできない。何人もどのような方法であれ国王を告発もしくは告訴することはできない。


(第7条)
国王は仏教徒であり、宗教の擁護者である。


(第8条)
国王はタイ軍大元帥の地位にある。


(第20条)
王位の継承は、仏暦2467年王位継承に関する王室典範の趣詣による。かつ国会の承認を要する。 男子の王子が存在しない場合は、国会は王女が王位を継承することを承認することができる。 仏暦2467年王位継承に関する王室典範の改正は、憲法の改正と同一の方法によって行うことができる。


(第21条)
王位が空席になった場合、第20条により枢密院は王位継承者名を国会に提案し承認を求める。 国会が承認したとき、国会議長は、王位継承者を招請して国王の地位に上がらせ、人民に公布する。



第三章 タイ国民の権利と自由
(第22条)
何人も憲法の規定の下に権利と自由を有する。


(第23条)
何人も法律の下に平等であり、法律による保護を等しく受ける。


(第24条)
何人も政治的権利を有する。政治的権利の行使は法律規定に従って行う。


(第25条)
国民の義務に反せず、また秩序と人民の善良の風俗に反しないとき、何人も宗教、宗教の宗派、および宗教上の教義を 信仰する完全な自由と自己の信仰に従った祭式を行う自由を有する。
第1項の自由を行使するにあたって宗教、宗教の宗派、宗教上の教義の信仰もしくは信仰に従った祭式の実施を理由に、 国家の行為によって、得るべき権利あるいは利益を失うことがないよう何人も保護を受ける。


(第28条)
何人も身体の自由を有する。 法律に規定する権限に依る場合を除いてどのような事件であっても、逮捕、拘禁、身体の捜査をすることはできない。


(第31条)
強制労働は行うことはできない。 但し緊急に発生した公共への危害を防ぐため法律に規定する権限に依る場合、もしくは、国家が戦闘あるい戦戦争状態にある期間や 非常事態宣言あるいは戒厳令布告の期間で、法律に規定する権限に依る場合は除外する。


(第34条)
何人も言論、執筆、出版および宣伝の自由を有する。
これらの自由の制限は行うことはできない。但し国家の安全維持、人民の権利自由および他の人の名誉名声の保護、 秩序と善良の風俗の維持、および人民の精神身体の劣悪化を防止停止するため、法律の規定する権限による場合を除く。
新聞事業主はタイ国籍者でなければならない。これは法律に定める条件に従う。
国家が資金その他の財産を与えて私人の新聞を助成することはできない。


(第36条)
何人も平穏かつ武器不所持で、集会する自由を有する。


この自由の制限を行うことはできない。但し、公共地で集会する場合で、公共地を利用する人民の利便を保護するため、 もしくは、国家が戦闘あるいは戦争状態にある期間や非常事態宣言あるいは戒厳令布告の期間て秩序を維持するため、 法律の規定する権限による場合を除く。


(第40条)
何人も王国内を移動し居住地を選択する自由を有する。
これらの自由を制限することはできない。 但し国家の安全、人民の秩序、人民の福祉、都市計画もしくは青少年の福祉のために、法律に規定する権限による場合を除く。
タイ国籍者の国外追放、タイ国籍者の王国内立入の禁止は行うことはできない。

(第41条)
家庭についての権利は保護される。


(第45条)
何人も民族、宗教、国王、憲法に反して憲法上の権利と自由を行使することはできない。



第四章 タイ国民の義務
(第46条)
何人も民族、宗教、国王および本憲法による民主々義体制の統治を維持する義務を有する。


(第47条)
何人も国家防衛の義務を有する。


(第48条)
何人も法律の規定に従い軍務につく義務を有する。



第五章 国家の政策方針
(第53条)
本章の規定は法律の作成と政策決定の方針に資するため規定するもので、これにより国家を訴える権利は生じない


(第54条)
国家は国王制度、独立および王国土の十全を維持しなければならない。


(第56条)
国家は独立、国家の安全および民族の利益維持のため軍事力を保持しなければならない。
軍事力は、戦闘もしくは戦争のため、国王制度防衛のため、反乱暴動鎮圧のため、国家の安全維持のため、 もしくは国家開発のために用いる。

(第57条)
国家は人民に生命身体財産の安全および平穏な生活をおこなう安全を与えるため法律と秩序を維持しなければならない。


(第58条)
国家は真剣に政府制度を効率的なものとすることに努め、また、違法な利益の追求を徹底的に防止ぽく滅する。


(第64条)
国家は民族文化を促進し維持する。


(第66条)
国家は何人もが平穏に生活できる程度までその経済的社会的地位を向上させるための活動をする。


(第70条)
国家は、民族国家への義務行為、公務援助、人道的義務による行為もしくは自然災害によって被災した者を扶助する。


(第73条)
国家は公衆衛生を促進する。また、貧困者に無料医療を与える。
危険な伝染病の防止と撲滅のための措置を、無料で人民に与える。

 こういう機会だからこそ検索して読む気になったのですが、まあ何といいますか興味深いです。
 タイが民主国家ではないなどと聞いたこともありませんが、民主国家のあり方も一様ではないと思ってしまいました…