低濃度汚染水の放出

 事前の通告なしに放射性物質の低濃度汚染水が海中に放出された、というニュースを聞いて思ったのは、コントロール不能な状況で高濃度汚染水が流出してしまっている以上、いまさら低濃度汚染水を放出しても問題は大きくないだろう…と誰かが考えてそれをやったんじゃないか、ということでした。
 

 もしそうならうかつ過ぎる行動です。
 そうでなければ、どれだけ文句がでるにしても事前に通告して理路を通して納得してもらうか、よしんば説得が不調の時であっても他に選択肢がないことを示して誰かが「責任を取る」という決断をして行動に移すべきだったでしょう。正しい理屈であるならば、後からわかってもらえる可能性は高いのですし。


 高濃度汚染水のコントロールのために必要であった。緊急避難的措置だったと理解される…
 そういうご意見も目にしましたが(→「少ないものをどれほど減らしても多いものには影響しないわけで」キクログ)、であればこそ「事前通告」「公表してからの行動」は絶対的に必要であったと思います。
 東電が原子力安全・保安院に計画を報告して了解されたとなっていますが、必要だったのは地域住民に対して、利害関係のある漁業関係者などに対して、そして他国への通告も含めた「公表」です。


 個人的にはここで言われる問題設定が(最初から)正しかったのかということには疑念を感じます。
 事態がどれほど切迫していたのかで「緊急避難」かどうかは評価されるものです。高濃度汚染水の流出が確認されたのが2日朝。低濃度汚染水の放出を始めたのが4日の夜。一旦とは言えピットからの高濃度汚染水の流出が止まったのが6日の早朝。
 今後別のところから汚染水が漏出する可能性は否定できませんが、時間的猶予は一時的にもできました。それこそ廃タンカーなり何なりを用意して低濃度汚染水をそこに移すということは可能だったんじゃないでしょうか。


 一刻の猶予もなく、低濃度汚染水のある集中廃棄物処理施設を空けて、そこに地下の高濃度汚染水を入れなければならない状況だと問題が把握されていたのでしょうか?
 また、他の手段はないと十分に検討された末のことなのでしょうか?


 状況の全容を的確に把握する人がいなかった。
 原発内の施設に高濃度汚染水を移すのが最もコスト的に有利だった。
 あるいは誰も「責任」を負いたくなかった。


 そういう感じではなかったかという疑念が拭いきれないんですね。
 理路が通っていればこそ自信をもって公表すべきだった。それができなかったということで、本当に最初から理路が通っていたのか怪しく見える…そういうことです。