医療とサービス業

 数日前のフジの「とくダネ」で、確か医療(専門)用語が難しいので…という話題だったと思いますが、コメンテイターの竹田圭吾ニューズウィーク日本版)が「医者もちゃんとサービス業っていう自覚を持てばいいんですよ」という言葉を。
 ちょっとあれっと思い、それでもやっぱり医者はサービス業だったかなとも思い、あやふやな気分になりましたのでひまをみて調べてみました。
 経済用語としてのサービスは「売り買いした後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のこと」ということで、確かに医療をサービス業と呼ぶことはできたのだと確認。さらに(2002年以前の)日本標準産業分類でもサービス業の分類に「88 医療業」がありました。

L サービス業
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88 医療業
89 保健衛生
90 社会保険社会福祉
91 教育
92 学術研究機関
93 宗教
94 政治・経済・文化団体
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 ここに挙げたのはこういうのも「サービス業なんだ…」と個人的にひっかかったものですが、これは第11回の大改訂で大きく変わりました。(日本標準産業分類の変遷と第11回改訂の概要 総務省統計局)
 サービス業から大幅に大分類として独立したものが出て、医療もその一つでした。

N 医療,福祉
73 医療業
74 保健衛生
75 社会保険社会福祉・介護事業

O 教育・学習支援業
76 学校教育
77 その他の教育,学習支援業

Q サービス業(他に分類されないもの)
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81 学術・開発研究機関
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91 政治・経済・文化団体
92 宗教
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 確かに医療や教育がサービス業とは異なる分類となると、何かしっくりくるような気がしてしまいます。どうしてこういう気持ちになるのかつらつら考えてみますと、私自身のバイアスとして「サービス業≒接客業」というようなイメージがあるからじゃないかと思い至りました。
 「客のもてなしをする職業」としての接客業です。喫茶店、飲食店、水商売みたいなものからホテル・旅館業、小売流通業などなど…笑顔でお客さんに喜んでいただくことを主目的としたそういった商売、それが私の中ではサービス業という感じで捉えられているんじゃないかと。
 そしてまた自分の中では、「医療」「教育」「保健衛生」等々が一方的なサービスの提供に留まらない職種として考えられているんだろうなと思ったのでした。何か提供される側も受身ではなく能動的に参加しなければならない内実があるような…。
 さらに言えば好不況の波に拘わりなく必要とされ、近代社会の中ではとりわけ必須のものであるといったような認識も。まあ偏見といえば偏見なのでしょう、職業に貴賎なし云々という文脈ではまさにそうです。


 医療において「患者」(patient)が我慢する者から変化してきたのは、アメリカの公民権運動あたりからだったと言われます。伝統的な医療者−患者の上下関係から、医療サービスの提供者(health care-provider)と消費者(health care-consumer)へという流れです。
 これ自体、サービスを受ける私たちにとってメリットがあるものだったとは認識しているのですが、単に消費サービスの契約関係ということでよいのかなあということはまだ少し自分では思ってしまいます。