受賞をはしゃぐのもほどほどに

 ノーベル賞関連のニュースがこれでもかと続いています。おめでたいことですし大きく扱うのもよいのですが、関係者以外の特にメディアはそろそろ他の話題に転じたほうがよいのではとも感じます。
 中でもちょっと問題かなと思うのは、基礎科学分野の研究を他人事だからとやたら持ち上げるコメントが多いことです。地味なところが脚光を浴びるのは良いことですが、さあ若者よ基礎分野を目指せとまで放言するのはやめたほうがいいのにと思うところも。


 理系の基礎研究の分野も多岐に渡りますし一概には言えないのですが、少し知っているそういう友人知己の中で報われていない人も相当数います。ポスドクから後がないとか、学位だけ持っていても常勤がないとか、決して自分たちの努力・力量不足とは言えないのに幸せな将来像がなかなか描けない人が少なからずいます。
 分野によっては外から研究費を持ってくるのに難渋するところもあって、そういうところは所属の中でも肩身が狭いと聞きます。もちろん研究に熱意があって、取り組めているのを幸せに感じているなら端から何もいうべきではないと思いますが、四十を越えて来年自分がどうなるかが見えない人もざらにいる状況に触れると、他人事だからと「基礎研究をやりましょう」「基礎科学分野には夢がある」みたいに煽るメディアは鬼に見えてしまいますね。どうせ責任もとらないのでしょうが。
 少しずつ少しずつ研究が学問分野に寄与して、そういう万単位の人がいる中でほんの数人が脚光を浴びるような世界だと思います。本を何冊か書いたからって、本当に自分がその分野に揺るぎない寄与をもたらしたと言い切れる人はそうそういないでしょう。そういう人でなくとも、とりあえずそこでご飯が食べられればまだ幸せです。そうじゃない人たちのことが、ついこの間まで話題になっていたんじゃなかったでしたっけ?
 射幸心を煽るよりも、基礎科学分野の予算を(特に商売につながらず、産学協同などと縁遠い分野で)少しでも積み増して、常勤のポストを一つでも多く用意するようにメディアは動かないものでしょうか。


 あとこれはNHKのニュースだったと思いますが、「50年で30人のノーベル賞受賞者を」とかいう妙な計画があると知りました。調べてみると科学技術基本計画とかいうものだそうで、

 政府の科学技術会議(2001年1月6日より総合科学技術会議)が策定する、日本の科学技術の振興に関する基本的な計画のこと。
 1995年に制定された『科学技術基本法』の規定に基づき、5年毎2期に分けて策定される。
 2回目の科学技術基本計画(2001年〜2005年)では、「日本人のノーベル賞受賞者を50年間で30人に増やす」などの目標が設定され、日本の研究開発費を国内総生産(GDP)の1%にまで引き上げる(従来は0.7%)ことを求めている。
(キーワードガイド|新語辞書)

 何て言うか大まぬけな計画ではないかと思ってしまいます。今回の受賞者の方々の研究で受賞理由になったものはほとんど40年から50年前のものだったじゃないですか? 私が産まれる前のそういう仕事で、今になって受賞してびっくり…といったものを計画して生み出すことが可能でしょうか?
 もしこうしたスパンで受賞するのが続いたとして、今後50年間で受賞する人はとっくにその業績を作ってしまっているはずです。過去にお金なり何なりを送ることはできません。(お祈りすることはできますが、それに大金が必要とも思えません)
 基礎分野にお金をという発想は買いますが、ノーベル賞で成果をはかるというのは明らかな錯誤ではないでしょうか? 自分には関係のないところで知らずにいたのですが、なんとも間抜けな感がありますね。


 あと最後に、全然ノーベル賞とは縁のない文系分野も忘れないでください。(って何だかネズミのお墓に花を供えてやってくださいといってるみたいですね…)

テレ東の番組の件

 何のこともなく普通に録画されていました。
 デマに振り回されたということでしょうか。テレ東のサイトでは確かに「番組中止のお知らせ」は見つけられなかったのですが、[番組表]では番組が消えているように見えたのです…orz


 でも、「よかった、日本終了じゃなかったんだ」ということにしておきましょう(笑)

外貨準備高大丈夫?

日中韓、十分な外貨準備で金融危機には直面せず=韓国大統領

 [ソウル 8日 ロイター] 韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は8日、中国と日本、韓国の外貨準備は合計1兆8000億ドルにのぼり、欧州で広がっているような金融危機には直面しないとの認識を示した。(後略)
(REUTER 2008年 10月 8日)

 一緒にするな(笑)という声も聞かれますが、実は問題はそこにはないような気がします。


外貨準備等の状況(平成20年9月末現在)財務省

 平成20年9月末における我が国の外貨準備高は、995,890百万ドルとなり、平成20年8月末と比べ、851 百万ドル減少した。

 995,890百万ドルはおよそ9960億ドルですね。
中国の外貨準備高がG7の合計を上回るサーチナ

中国の外貨準備高は、4月末現在で1兆7600億ドルに達した。中国社会科学院世界経済と政治研究所の余永定所長は取材に答えた際、この数字はすでに世界主要7カ国(米国、日本、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア)のG7の合計額を上回っていると語った。

中国はすでに世界最大の外貨準備高保有国であり、4月には再び745億ドル増加し、1時間に約1000万ドルずつ増えている。
(チャイナネット 2008年6月3日)

 四ヶ月ほど前の記事ですので、この後の増減についてはやや不確かです。ただ、中国が外貨準備高を大幅に減らしたというニュースは聞きません。

 韓国の外貨準備高+日本の外貨準備高(9960億ドル)+中国の外貨準備高(1兆7600億ドル)
=1兆8000億ドル(李明博大統領の合算)

 これを解いて
 韓国の外貨準備高−9560億ドル

 って本当ですか?