「群れ」のはなし
連休中妙に早起きしてしまって*1、たまたまテレビをつけてみたら「視点・論点」の再放送をやっていました。論者は詩人のアーサー・ビナードさん。最近ちょくちょく目にするお名前で、日本語が語れるガイジンという枠*2を超えてご活躍のようです。
途中から見たのでタイトルはもう忘れていますが、英語と日本語の言葉としての差異について面白い題材で語られていました。
それはまさにビナードさんが訳された本、『あつまるアニマル』(講談社)のテーマでもあったそうですが、「群れ」という日本語でなら一語のものに英語では非常に多様な言葉があるというのです。
a pride of lions
これが「ライオンの誇り」とかではなくて、「ライオンの群れ」なんだということには驚きました。驚いたのでこのフレーズと元本の名前は覚えることができたのですが。
他にあったのは、タツノオトシゴは馬と同じ語を使って
a herd of seahorses (タツノオトシゴの群れ)
だったかな。若干頼りない記憶ですが。
あと蝶々やらの表現も出ていたと思いますが失念。猿の「群れ」については軍隊になぞらえるとかいう話でしたので、troopだったかなと思って辞書を引いてみると確かにありました。
a troop of monkeys (猿の群れ)
猿の集団行動が歩兵のように見えたのでしょうか? ビナードさんは西欧の「狩猟の伝統」が多様な「群れ」の表現を生んだのだとおっしゃっていましたが、確かにそれはありそうですね。
訳された『あつまるアニマル』は絵本で、各見開きごとに異なった動物の群れの絵と、それに対応する英語の表現が記されているもののようです。日本語ではそれこそ皆「むれ」になってしまいますので、相当訳出に心を砕かれたとのこと。(うまくいったかどうかはわかりませんけど…)
折角辞書を開いたので*3、他に「群れ」の表現として挙げられているものをご紹介。
先ほどのa pride ofは、ライオンだけじゃなくて鳥の群れにも使えるそうで
a pride of peacocks (クジャクの群れ)
という表現もありましたが、鳥の群れに使われるのは
a flock of ducks (家鴨の群れ)
のようなものもあり、これは家鴨やガチョウに用いるそうです。ただしこのflockは羊やヤギにも使われるとのことで、つまりは家禽・家畜のように人に近く飼われるものにこれが使われるのでしょう。
でも「追われていく家畜」には
a drove of sheep (追われていく羊の群れ)
などの表現もありますし、ガチョウでも
a gaggle of geese
というものもありますね。どういう違いなのかは謎です。
あと、鳥でも猟の対象になるものにはなんだかいろいろあって、うずらでは
a bevy of quails (うずらの群れ)
a covey of quails (同上)
なんていうのがあるようです。これもまた違いの内実はわかりません。他に
a wisp of snipes (しぎの群れ)
a siege of herons (さぎの群れ)
などもありますし、「飛んでいる野鳥」には a skein of 、「水上で休んでいる水鳥」には a raft of という表現があるそうです。もうこうなってくるとおぼえ切れませんね。
小鳥だと a pod of になるそうですが、このpod ofは鯨やアザラシにも用いる表現だということでした。
魚には a school of、これはメダカの学校からの連想で憶えられそうです(笑)他にa shoal of。
虫の類には a swarm of とか
a cloud of locusts (イナゴの群れ)
a cluster of bees (ミツバチの群れ)
このclusterは「無生物」にも使われるようです。
ちょっと早起きしたおかげの「拾い物」のような豆知識でした。
脳の力
今日の夜10時から、NHK総合で「復活した"脳の力" 〜テイラー博士からのメッセージ〜」という番組が放送されます。
以前BShiで放映したおり、録画して視聴しましたがとても示唆的で感銘を受けました。
新進気鋭の女性脳科学者として活躍していたジル・ボルティ・テイラー博士。37歳で脳卒中に倒れ、一時、言語や思考をつかさどる左側の脳機能が停止した。8年間のリハビリを経て完全復活を果たした彼女の手記は、脳卒中の実態や脳の未知の力を示す貴重な記録として、人々の共感を呼んでいる。闘病中には不思議な幸福感を感じたと彼女は語る。復活までの軌跡を追い、生命科学者中村桂子さんとの対談を交えて人間の脳の神秘に迫る。
人間とか幸福などについて考えておられる方には必見だと思っています。