ヒドラの首

 学生支援アニメーション『キャラディーのジョークな毎日』。キャラデザやアニメーション自体を京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科の学生が作り、声をアミューズメントメディア総合学院声優タレント学科の学生があてて、365日毎日一年間放映するという実験的な番組です。(5分番組)


 その65話目、「ブロンドの抗議」に興味深い描写が。
 ある酒場で某芸人がジョークを飛ばしています。出すジョーク出すジョークみんなブロンド女性が主役で、彼女たちがいかに間抜けで知恵が足りなくてお色気過剰であるか…といったネタばかり。


 その時すっくと立ち上がったブロンドの女性、

 馬鹿にしないでよ!
 どんな悪いことをした?


 髪の毛がブロンドなだけよ。それだけで私たちはどんなに頑張っても尊敬されないし、男たちから馬鹿扱いされ、いつもエッチな目で見られ、自分の可能性を広げるチャンスを奪われてるんだわ。
 ブロンドだって言うだけで!


 あなたねえ、どれだけ多くのブロンドが悔しい思いをしているかわかってるの?

 もちろんこの話自体がジョークになっていてオチもあるわけですが、この抗議の部分、最近聞いたような話かなあと思えました。


 さて、私たちは自分たちがもつすべての偏見を無くすことができるでしょうか?
 悔しい思いをするのは、身長が低かったり体重が多かったりする人たち。髪の毛が少ない男性。どこかに障碍を持つ人。変わった職業についている人。あと人種国籍に偏見を持たれている人たち。数限りなくあったりします。
 少なくとも私は、これらを一律にすべて排除するということは残念ながら無理だろうと思っています。個人個人が変わることはあり得るとも思いますが、社会的なそれはヒドラのようなもの。一本の首を公権力で切り取ったとしても、また別の首が伸びてくるという具合になるはず。
 そしてそれならばと真ん中にある不死身の首を倒してしまえば、おそらくそれは社会全体のある種の死に結びついてしまうんじゃないかとも思えてしまうのです…