そうやっていらつくから…

 朝鮮日報(日本語版)などをちょこちょこ見ていますと、
 中国産毒性物質、風邪薬として売られていた

 昨年9月、パナマシティの公衆病院に特異な症状を訴える患者らが押し寄せた。この患者らは、身体の一部の機能が停止または麻痺し、中には呼吸困難に陥った患者までいた。死亡者も続出したが、はっきりとした原因は分からないままだった。

 唯一の手がかりは、患者らがある風邪シロップを飲んだ後に異変を見せ始めたという点だけだった。そこでついに米国の医療陣までもが急きょ派遣され、1カ月余りの調査の結果、風邪シロップに含まれていた「ディエチレン・グリコール」が原因であることが判明した。

現在までに申告された死亡者数は365人で、このうち当局の調査で確認された死亡者数は100人余りに達し、被害者の大半は母親が与えたシロップを飲んだ幼い子供たちだった。

 そして、この偽造薬を製造したのは、上海近郊の恒蘒に位置するある化学薬品工場だったことも分かった。工場が位置する揚子江三角州工業団地では、無許可の偽造薬品製造工場らとブローカーらが公然と活動している、とニューヨーク・タイムズは暴露した。


 ニューヨーク・タイムズは、今回のケースが▲中国製商品が世界市場で占める比重に比べ、安全に関する規制がどれほど遅れているか、▲国家間の通関・検疫手続きが偽造薬品の流通にどれほど無力なのかを示す代表的なケースと指摘した。

 こんな記事が時々ありまして、この類のニュースはなぜか日本のメディアがちゃんと採り上げることが少なく、何だか役に立つなあと思ったりもするわけですが、次のような記事があると「おいおい」と思ってしまうことも確かです。
 『幻の三中井百貨店』が韓国人に問いかけるものとは朝鮮日報日本語版)

 地上6階、地下1階、延建坪2504坪、白亜の威風堂々たるルネサンス様式の建物。1・2階の売り場には化粧品と婦人服、4階は紳士服、5階は家具と電化製品、6階は貴金属とレストラン。最新の商品で満たされた華麗なショーウインドーの前には常に客が押し寄せ、大規模な企画セールの際は、足の踏み場もないほどだった。また、商品券や限定販売、景品に休日営業、夜間延長営業などの様々なマーケティング戦略が次々に打ち出された。


 これは一時期、ソウルのある百貨店で見られた光景だ。その百貨店とは、1933年から45年まで現在の明洞ミリオレの位置に存在していた三中井百貨店だ。

 原著が出た時に買おうかなと思った本です(林 広茂『幻の三中井百貨店―朝鮮を席巻した近江商人・百貨店王の興亡』晩聲社、2004.03、ISBN:4891883146)。この韓国語版が出て、朝鮮日報のこの記者さんはその価値を重々認めた上で奇妙にいらついた感情を見せています。

 ところで、韓国の読者がこの本を一読すると、非常に不愉快な気分にさせられるはずだ。まず著者は、三中井が朝鮮の市場と商業構造に及ぼした悪影響について、まったく関心がない。さらに、御用商人として帝国主義戦争の軍需物資供給を担当したことを「成功したマーケティング」と評価し、「日本の先進文物を朝鮮に伝える懸け橋としての役割」を果たしたのはもちろん、こうした日本式百貨店経営のノウハウが、現在の新世界・ロッテ・現代をはじめとする韓国有数の百貨店にまで受け継がれたと述べている。


 しかし、「日本の統治に抵抗した朝鮮人らのうち、多くの人々が日常生活では日本のライフスタイルに適応し、自ら収奪の手先と非難していた三中井や三越でショッピングを楽しんでいた」という下りは、そのまま見過ごすことのできない問題を抱えている。そうした「日常」の微妙さについて、これまできちんと検証することのできなかった韓国近現代歴史学のすき間にこの本は位置しているのだ。

 日本を普通に受け容れてきた「日常」なんて、まともに韓国人の学者が書けばむやみな批判にさらされて大変だったろうことは明らかでしょう(cf.呉善花『生活者の日本統治時代』三交社。などに対する反応)。そういう「いい関係」を否定しないと、抑圧され搾取され支配された時代のイメージが揺らいでしまうのでしょうから。でもそこを捉えてこなかったことは、韓国近現代歴史学を責めるのと同時に(もしそれが可能なら)メディアを含めた自分たち全体が気づくべきことではあると思います。


 「三中井が朝鮮の市場と商業構造に及ぼした悪影響」なんて、「あるはずだ」と教えられてきただけの日本の悪行に照らしてこの人が思い付きを書いただけなんじゃないですかね。まあそういう構図が揺らぐと大変であろうのはわかりますが…。
 ここまで書くようになったことを評価したい気持もありますが、まだそんなことを…と思う気持もあって、なかなか複雑です。