文鮮明のイグノーベル賞
大いに皮肉めかしたこととはわかっていても、2000年のイグノーベル経済学賞が文鮮明(と彼の集団結婚式)に贈られたと聞いたときから、このおちゃらけの賞を気持ちよく面白がる気分にはどうもなれません。
経済学賞 (2000)
・文鮮明師(韓国)
効率と安定成長を集団結婚産業に持ち込んだことに対して。彼の報告によると、1960年には36組、1968年に430組、1975年に1800組、1982年に6000組、1992年に30,000組、1995年に360,000組、1997年に36,000,000組が結婚している。
文鮮明師は、統一教会の教祖。
(Wikipedia:イグノーベル賞受賞者の一覧より)
最初にこの賞の話題を聞いたのが、確か1997年の「たまごっち」の作成者の受賞でしたし、
経済学賞 (1997)
・横井昭宏(千葉、ウィズ株式会社)
・真板亜紀(東京、バンダイ株式会社)
数百万人の仕事時間を、仮想的なペットの飼育に転換したことに対して。
「たまごっち」のこと。
その話題と一緒に「マーフィーの法則」がらみの研究が受賞していたことを知って、真面目な突拍子もないことについて研究されたものあたりにユーモアを込めて贈られるものかと、そういう印象を受けていたのです。
物理学賞 (1996)
・ロバート・マシューズ(アストン大学)
マーフィーの法則についての研究、特にトーストはたいていバターを塗った面を下にして落ちることの実証に対して。
さらに次に(私に)聞こえてきたのが「バウリンガル」の受賞だったと記憶していて、ますますそうした印象が強くなっていたのです。
平和賞 (2002)
・佐藤慶太(タカラ株式会社社長)
・鈴木松美(日本音響研究所所長)
・小暮規夫(小暮動物病院常任理事)
コンピュータによって自動的にイヌ語をヒト語に翻訳する機械「バウリンガル」を発明し、種のあいだの平和と調和を促進したことに対して。
ところが何かの機会に文鮮明も受賞という話を聞いて、しかもそれが例の「集団結婚式」がらみのものだったと知った時のいやな感じはまだ残っています。
もちろんよくよく見れば、わりに最初期からおちょくったり皮肉を効かせたりする受賞もあったんです。後で知りましたが。わりに政治的なメッセージもあったのでした。
化学賞 (1991)
・ジャック・ベンベニスト (多作な改宗勧誘者にして、ネイチャーへの熱心な寄稿者)
水が知性的な液体であるというしつこい発見と、水はある出来事の痕跡が完全に消滅した後、しばらくたってもそれを覚えていられるという、彼のお気にめす結果を立証したことに対して。
ホメオパシーの根拠となるような論文を国際的な学術誌ネイチャーに掲載したことを指している。(後に反証実験が行われ、ベンベニスト博士の実験には再現性がないということが確認されている。)
平和賞 (1991)
・エドワード・テラー (水爆の父、最初のスター・ウォーズ計画の提唱者)
我々が知る「平和」の意味を変えることに、生涯にわたって努力したことに対して。
互いの国が核武装によって抑止力を持ち、平和が訪れると主張した(核抑止論)。
数学賞 (1994)
・サウス・バプティスト教会(アラバマ、道徳の算術的な計量家)
もし人々が悔い改めない場合、どのくらいのアラバマ州住民が地獄に行くかを郡ごとに見積もったことに対して。
平和賞 (1996)
ジャック・シラク(フランス大統領)
ヒロシマの50周年を記念し、太平洋上で核実験を行ったことに対して。
1995年9月から1996年1月まで6回もの核実験をムルロア環礁で実施。
平和賞 (1998)
・シリ・アタリ・ビハリ・ワジャパイー(インド首相)
・ナワズ・シャリフ(パキスタン首相)
度を越して原子爆弾を平和的に爆発させたことに対して。
インドは1998年5月11日・5月13日に、パキスタンは5月28日・5月30日に「平和的核爆発」の名目で核実験を実施。
化学賞 (1998)
・ジャック・ベンベニスト(フランス)
水は記憶を持つだけでなく、その情報を電話線やインターネットで送信することもできるというホメオパシー的発見に対して。
ベンベニストは1991年に続いて2度目の受賞である。
少し抜粋して引いてみましたが、こういうのを知ったとしても何かすっきりしない感じが残ります。中途半端に政治性が残るのが笑いを引きつらせる感じといいますか、まあ自分の趣味に合わないということです。
むしろラジー賞みたいに、全部上の引用みたいなのにアイロニカルに批判の意味も込めて贈るようにしてしまったならばすっきりできたとも思うのですね。
どこか「俺様」が自分の趣味で選んでいるんだと、あれもこれも適当に、結構真面目にやっている人の仕事まで一緒くたにしてしまっている(「たまごっち」や「バウリンガル」のことが頭にあります)というのが、どうにも気に入らない感じなんです。
まあ適当に受賞者の一覧をご覧ください。本当に面白い、あるいは真面目(そう)な研究もありますよ。私と同じように独りよがりな感じを受ける方もいらっしゃるのではないかと、ちょっとだけ思います。(もちろんそうではなく、心底趣味に合うような方もおられるかもしれませんが…)