竹熊さんの講演

 かなり久しぶりの更新です。まあ淡々と日々を送っていたわけですが(もちろん友人と会ったりささやかに楽しんだりというのはありましたけど)何かちょうどブログネタになりそうなことが今日あったので、それを書いてみようと思います。


 今日は竹熊健太郎さんの公開講演会を拝聴してきました。お題は「マンガとアニメーションの間」。内容的には竹熊さんが武蔵美で7年、8年やってこられたマンガ論・アニメーション論の駆け足の紹介という感じであったと思います。
 最初にマンガ史・アニメ史を同時に手がけることの意味から始められ、専門的にどちらかを(アカデミックに)やっている人はいても、両者を同時に視野に入れた考究というのは大事で(もとより双方を志向する作家が少なからずいて、かつ互いの歴史的影響も見過ごせないため)そこらへんに竹熊さんの講義の意味があるというようなことを述べられました。
 そしてマンガもアニメもほぼ同時期に19世紀末に(本格的に)始まったという話から、新聞連載で初めてのあたりをとったコママンガ「Yellow Kids」と、最初のアニメーターと呼ばれるウィンザー・マッケイの「Little Nemo」、フライシャー兄弟の実写・アニメ作品と紹介しながら要点を解説。
 そのフライシャー作品の「Popye」に出てくるメタ手法が手塚治虫に影響しているだろうという話から手塚のコマ割、そして映画的作品という意味で大友克洋の話に移り、かなり駆け足でマンガ描きとしての宮崎駿が語られました。
 また話は今世紀に入ってからのセルフ・プロデュースアニメに移って新海誠、そして井端義秀やふかくさえみさんの作品の紹介と意味を語られて概ね終了。
 ざっとこのような盛りだくさんを、予定では午後1時から90分だったのですが質疑(確か4名ほど)を含めて2時間15分ほどかかって終えられました。


 いくつかの内容はすでに「たけくまメモ」で折に触れて見たことがありましたが(2005年あたりの初期の頃から興味深いものはどんどん紹介されてましたから)、まとめて紹介・解説していただけたのでそれはそれでかなり面白かったです。決して2時間超が長くは思えませんでした。


 ただ、さすがに本編紹介を(豊富に)挟んだこの短い間では竹熊氏の持論、時間表現論云々はほとんどカバーできていらっしゃらなかったようです。でも一言

 マンガで一番大事なのは、絵でも表現でも物語でもなくてコマ割です

 というあたりはおっしゃっていて、そちらもじっくり聞きたかったと思いました。


 要するに描線を用いた表現としてマンガもアニメも一緒なのですが、媒体に定着した「時間」を、映画に準じてリアルタイムに近く見せるのがアニメでコマ割によって展開するように見せるのがマンガ、ということなのだと私は理解しています。
 本当はそこらへんで質問もしようかなと思いましたが、時間がかなり押していたのと、何より自分で聞きたいところがかっちりまとまっていなかったので遠慮してしまいました。少し残念。
 伺いたかったのは、実は日本におけるそのマンガの「コマ割」が独自の文法になっているということ。それがローカルで文化的な脈絡によるものになっているんじゃないかというあたりでした。だから単に右上から左下への展開というだけではマンガらしくないマンガになってしまうだけで、それがアニメージュ誌上の初期の「ナウシカ」の問題だったのではないか。そしてそれに「慣れて」きた海外のマンガファンには理解されるものの、その文法が読み取れない人たちにはうまく理解されないのではないか。またそうした文法はかなり特殊な芸となっているもので、普遍的一般的なマンガというものを想定するならそこを逸脱しているのでは…
 などというものなのですが、今ここで整理して書こうとしてもまだうまくまとめて文にできませんね(笑)
 

 無料の催しですし先着100名というのにちょっと危ぶんで、開演30分ほど前に会場に到着したのですが待っていたのは3名ほどでした(苦笑)会場も最終的に5割から6割ぐらいの入りというところだったでしょう。でもなかなかいいイベントだったという感想です。
 久しく書いていなかったものですから、取りあえずリハビリとしてこれを書き留めておきます。