テフロン加工製品に関する疑念

・テフロン加工の製品は200℃以上の加熱(一定の温度に関する確実な報告はない)で有害化学物質を発生する
・加熱しないテフロン加工に関する危険性は言われていない
・この化学物質群は鳥類に急性の毒性を示す
・人間に対する、特に慢性的に曝された場合の影響はほとんどわかっていない
・そういう意味で今後の諸研究に対する注目が必要である


 BBCの記事"Teflon's sticky situation"によれば、こびりつかないフライパンなどに用いられているテフロン加工が、発ガン性や催奇性の危険性への疑念をもたれているとのことでしたが(当該記事は昨年10月のもの)、つい最近この危惧についてアメリカで訴訟が起こされたというニュースがありました。

テフロン製造で集団訴訟 米消費者がデュポンに [ 07月20日 09時06分 ] 共同通信


 【ニューヨーク19日共同】米化学大手デュポンが、フッ素樹脂「テフロン」加工製品の製造過程で使用する化学物質の人体への危険性を20年以上隠ぺいしていたとして、消費者が19日、同社に損害賠償などを求める集団訴訟を複数の州連邦地裁に起こした。
 焦げ付きを防ぐテフロン加工のフライパンなどは、米国のほぼ全世帯に普及しており、原告数が増える可能性もある。
 危険性を指摘されているのはパーフルオロオクタン酸塩(PFOA)と呼ばれ、フッ素樹脂の製造に不可欠な補助剤。米環境保護局(EPA)によると、動物実験で脳の発達などへの悪影響が報告された。原告側は(1)製品の買い替え費用の補償(2)健康影響の可能性を製品に明示すること−−などを求めている。


 私が最初のBBCの記事を知ったのは、lisalisa9さんの「旬のイギリス」の10月の記事です。

テフロンと発がん性の関係は?


1930年代に開発され、1946年にデュポン社が市場に送り込んだテフロン。
鍋が焦げ付かないので、私みたいな料理下手にはまさに救世主。
この他にも衣料にもコーティングしてあったりと気がつかないだけで、身の回りのいたる所で使われていますね。


現在では、新しい化学薬品が開発されると、人体や環境への安全性を何度もテストするのですが、テフロンは1981年以前に作られたためにテストから逃れた10万件のうちの一つ。
ちゃんとした(医薬品のような長々しい)テストらしいものは受けてこなかったそうだ。


テフロンを含めたプラスチック類の製造過程で使用する化学物質PFOA(Perfluorooctanoic Acid)は奇形児や発ガンとの関係が叫ばれ、デュポン社の工場があるウェストバージニアの町では、つい先日住民5万人と和解(示談?)が成立したばかり。
それでもデュポン社はPFOAは発がん性がなく、奇形も関係ない、と反論しています。(後略)


 しかしこのテフロンの危険性については、どうやらナイスミドルteru氏が昨年6月の時点で「週刊金曜日」に書かれていたようです。『買ってはいけない』の例もあり、「週金」がこういうトピックを扱うときは煽り記事になりがちだと私は思っておりますので、ちょっと他に情報を求めました。
 まずteru氏が「週金」で紹介したレポートというのは次のものです。


 環境ワーキング・グループ(EWG)レポート「台所でのカナリア」

(1)要約

 テフロンなどで樹脂加工した調理器具は、普通のレンジに 2〜5 分のせると樹脂加工表面が壊れる温度を超え、有害な粒子やガスを放出する。毎年これが、何百、何千というペットの鳥の死やヒトの病気の原因となっていることは、EWG の委託試験が物語っている。

 食品安全を専門とする大学教授が行った新しい試験では、メーカー品でない樹脂加工したフライパンを、普通の IH レンジで 3 分 20 秒、前加熱しただけで 391℃ に達し、レンジを切っても、なお温度は上昇した。同じ試験条件で行ったテフロン加工したフライパンでは 5 分間で 383℃ に達した(第1図)。

 デュポン社の研究では、テフロン加工したフライパンは 230℃ で有害な粒子が発生し、360℃ では少なくとも 6 種の有害ガスを発生する。その中には 2 種の発がん物質、2 種の地球環境汚染物質、MFA (モノフルオロ酢酸; 低濃度でヒトに致死性をもつ物質)がある。

 デュポン社の科学者らがレンジで達したと主張している温度(538℃)では、樹脂加工表面は破壊され、化学兵器で知られる PHIB を発生する。これは第二次世界大戦神経ガスホスゲンと化学構造上類似の物質である。

 過去 50 年間にわたり、デュポン社は自社のテフロン加工は通常の使用であれば有害な物質を放出しないと主張してきた。最近のマスコミにデュポン社は、「樹脂加工表面が著しく破壊するのは、温度が 349℃ を超えた時しか起こらない。これらの温度は通常の調理の温度をかなり超えている。」 と発表している。

 新しい試験でも調理器具は、これらの温度を超えており、普通のフライパンの前加熱時においても、強火にすると有害物質を発生することはわかっている。 (後略)


 これらテフロンから分解してできる有害物質の情報に関しての資料(ソース)的なまとめはこちらの化学物質問題市民研究会のサイトのリンクがよくまとまっていると思います。


 そして上記サイトからつれづれなるままにPFOS総説京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康要因学講座環境衛生学分野の”個人運用ページ)に飛んで読ませていただきましたが

 PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸)とは人工有機フッ素化合物でC8F17SO3-という、パーフルオロアルキル基(Rf:CF3-(CF2)n-)とスルホ基(-SO3H)からなる化学物質である。
 テトラフルオロエチレンを原料としてテロメライゼーション(テロメリゼーションとも)により、またはアルキル基を電解フッ素化することでパーフルオロアルキル基は製造される。
 Rf基において、Fは強い電気陰性度を持ち、C-F結合はきわめて強い結合となる。Rf基は自然的変化や生物学的代謝を受けないとされており、きわめて壊れにくい物質である。Rf基の構造上の特徴は、直線状で曲がりにくく、配列しやすいという。
 PFOSはフッ素系の表面コーティング剤、界面活性剤などの関連物質が製造され、特に撥水剤として衣類、特殊用紙、建材等、広範に使用されている。PFOSそのものだけでなく、PFOSをさらに化学修飾した物質も利用されている。最終的に大部分がPFOSに分解されてゆくと考えられている(一部はPFOAにもなる)。


 この物質の毒性についてはOECDからの初期調査報告書も出ているが、問題はどれだけ汚染が広がっているのか、またこれから広がるかである。とくに生物中への蓄積が起こりやすいという報告もあり、実際にアラスカ近海の野生生物の血液や肝臓に高濃度で見つかっている。

 現時点でヒトのPFOS汚染はおおまかにいって血液中に10-100nanogram/mLといったところである。すぐに分かるような急激な健康被害はないといわれるが、慢性的にどうなるのかいっさい不明である。また血液中濃度もどうなっていくのか動向が気になるところである。

 結局のところ人体への影響、被害の具合がよくわからないというのが一番の問題のようです。


 (追記:冒頭のテフロン加工で問題となるのはPFOAであって、PFOSとはやや異なる影響(たとえば蓄積性において)を及ぼすもののようで、上記引用は不適切かと思いましたのでカットいたしました。)


ただしテフロン由来の化学物質の毒性は、WWFの有害化学物質のレポートにもあるように鳥類に関して急性の毒性を見せることは確かです。


 先の「台所でのカナリア」のレポートに戻りますと

 1900 万のペットの鳥の命を奪われた 690 万世帯の飼い主らの多くは、テフロンが鳥に急性毒性を示すとは知らなかった。大部分の樹脂加工した調理器具に注意書はついていなかった。デュポン社は、テフロンが鳥を殺すことは公式に認めたが、同社が作製した鳥の安全性についての広報サービスのパンフレットには、テフロン・ヒュームの危険性に言及する前に、天井のファン、鏡、便器、猫の危険性を論じている。


 鳥の獣医は何十年も前から、テフロンやその他の樹脂加工した調理器具は鳥に対して高毒性のあるヒュームを発生することを知っていた。1986 年頃からシカゴのテフロン中毒症の専門家は、その現象を 「鳥の主要死因」 といっており、毎年テフロン加工した製品から発生するヒュームや粒子により何百匹もの鳥が死んでいると推測していた。全国的な正確な死亡数は発表されていないが、このシカゴの獣医は、単年度で樹脂加工した調理器具が関与した 105 例で 296 匹が死亡したという記録があるといった。


 文献の上からも、鳥の飼い主の話からも、通常の調理温度では鳥の死亡は認められるが、ヒトの判断力や意識を何ら低下させることはない

 とあるように、とにかく家の中で鳥をペットとして飼っている方には緊急度の高い危険情報であるのは確かでしょう。テフロン加工のフライパンを使うのは即時に中止した方が無難です。


 それでは「人」はどうすべきか?
 何とも判断がつかないというのが現状ではないかと思います。上に挙げたいくつかのリンクなどをご覧になって、それぞれが危険性を推し量るだけとしか申せません。急性の毒性はありませんが、長期にわたる影響評価はまだ誰も研究していないということですので…。


 君子危うきに近寄らず、というモットーでいかれるのが正しいかもしれません。いたずらに危機感を煽るようなことはしたくありませんが、「台所でのカナリア」は比較的冷静に事態を分析しておるように思えますので、最低このレポートのご一読は強くお勧めします。

 たとえペットに鳥を飼育していなくても、テフロン中毒症は知っておくべきである。通常の調理の範囲内での温度で、たとえばラフロンド社PFCで加工した製品は、ヒトに障害を与える有害なヒュームを発生することは疑いがない。それらはあなたや家族を病気にする可能性がある。

 テフロン・ヒュームに常時曝露される場合の長期の作用や、ヒューム熱自体については十分研究されてきたとはいい難い。