スンニ派

 この派はスンナ派、正統派とも呼ばれるムスリムの多数派で、シーア派以外のほとんどのムスリムがこう呼ばれています。もともとこの名称は「ムハンマドの言行(スンナ)を重んずる」ということに由来し、イスラム共同体の慣習やイスラム法シャリーア)など伝統を重んじる保守的な人々です(が、多数派だけに信仰のあり方にも実は多様性が出てきているのは事実です)。


 シーア派との最大の違いは、ウマイヤ朝の歴史もイスラム共同体の正史として認めているところでしょうか。ワッハーブ派と呼ばれる教派を生みますが、ワッハーブ派シーア派とさらに先鋭に対立する点を持っています。


 スンニ派からワッハーブ派が出たのが18世紀半ばです。これはワッハーブ(1703〜1787)による宗教改革運動から生れた教派で、原理主義的な側面を強く持ちます。彼らは『コーラン』の教義とムハンマドの言行を厳守することで、初期イスラムへの回帰を目指しました。そのため聖者崇拝を否定します。これがシーア派と最も相容れない原因となっています。
 サウード家の勢力下でアラビア半島全域に広がり、ワッハーブ王国(1744頃〜1817)が建国されますが、これが母体となって今のサウジアラビア王国が成立します。(もちろんそこにイギリスの思惑や干渉などもあったわけですが…)そういうことで、現在この派の教えがサウジアラビアの国教となっています。「イスラムピューリタン」と呼ばれることもあります(旧訳では「ワハービ派」とか「ワハビー派」とかいう表記もされていました)