在外邦人の選挙権

在外邦人の選挙権制限、最高裁が違憲判決

 海外に住む日本人の選挙権を制限している公職選挙法の規定が「国民に平等な選挙権を保障した憲法に反する」として、在外邦人ら13人が、国を相手に選挙権の確認や1人当たり5万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が14日、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)であった。(中略)


 訴えていたのは、米、独など5か国に住む在外邦人(2人は帰国)。公選法は選挙人の資格を「国内の市町村に3か月以上住民登録している者」と定めていたため、在外邦人は投票できなかった。98年の公選法改正で在外投票制度が導入されたが、衆参の比例選に限られていた。

 判決はまず、「憲法の趣旨に照らすと、国民の選挙権の制限は、選挙の公正の確保のためにやむを得ない場合に限られる」との初判断を示した。そのうえで、現在の公選法が、候補者の情報を伝える困難さなどを理由に選挙権を制限している点について、「通信手段が発達し、情報伝達が著しく困難とは言えないから、やむを得ない制限とは言えず、違憲だ」と述べた。(後略)
(2005年9月15日1時43分 読売新聞)

 現時点ではこちらに判決全文が載っています。


 この一週間の激動の中では少々影が薄くなりがちですが、私はとても重要な判決だと思います。以下の見方をどなたかおっしゃるだろうと思っておりましたが、まだ見かけませんので書かせていただきます。
 この最高裁判断が含意するものは、選挙権は国民の権利であり国民とは国籍を有するもののことを言う、ということだと思います。つまり海外在住で国内で生活を(共に)せず、もしかしたら日本国に対して税金も払っていない人でも、国籍を有しているならばこの国の在り方や今後の行く先に対して決定権を分有できるということです。言い換えれば、国籍を有するということはその国家に責任を持つ(ことができる)ということになるでしょう。


 日本国憲法44条但し書きにおいては、両議院の議員の選挙人の資格については、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならないと定めています。つまりその資格について必要とされる要件は、(年齢などを除けば)ただ国籍の有無のみということです。
 この憲法で定める国民主権の原理の再確認は、外国人参政権というものに対する議論を大枠で縛ります。もちろん地方参政権と国政レベルのそれは違うとかいう議論もありますが、少なくとも地方参政権を突破口に云々という戦略は(ほんとうにそんなものがあるとして)絶対に通りません。そういう意味でこの判決が重要性を持ってくる日もあるかなと思っています。