ちょっとした論争(A級戦犯)

 私が時々読ませていただいている小田嶋隆さんの偉愚庵亭慰憮録10月17日の記事で、小田嶋氏の勘違いで書かれたものがありました。指摘を受けて小田嶋氏はちゃんと修正し、その記事も残されているのでまあ問題はないと思われたのですが、コメント欄でちょっとした論争になっておりました。


 記事の勘違いというのは、東京裁判でのA級戦犯"Class-A war criminals"を「最高度に重い戦争犯罪人」と思われていた小田嶋氏が、

 …訳語としては、「第一級戦犯」の方が自然だ。
 にもかかわらず、どうして「A級戦犯」などという生煮えの訳語が一般に通用しているのか。


 おそらく、訳語を採用した側の人々(ジャーナリストなのか法曹関係者なのか、それとも役人なのか、私は知らないが)が、「これは、外国から押し付けられた犯罪なのであって、オレらは納得してないぞ」というメッセージを残したかったからだと思う。
 潔くないよな。

 という風に論じてしまったことでありまして、これについてはすでに(誤解だったと)決着がついております。


 しかしながら、まさにこの誤解を真っ先に「A,B,Cという区分けは罪の重い順ではありません」と指摘したInoue氏が、後から「東京裁判はおかしなものだった」とコメントした方々に対して、ちょっと挑発?的なコメントをしたところから、妙な方向で議論が続いてしまいます。

その件は以下の哲学者のブログを読んでね。よくまとまった論考になってるから。
http://d.hatena.ne.jp/charis/archive
>ゆえに後に国内的にも名誉回復がなされ、国際的にも法的に赦免されています。
サンフランシスコ講和条約読んだことありますか?

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名前: Inoue | 2005年10月19日 午後 10時21分


 Lさんは、まず国際法のお勉強をしてから発言した方がいいんじゃないのかなあ。戦争が罪であるかどうかなんて話は、もう何百年も議論されてきて、その歴史的画期が、パリ不戦条約であり、東京裁判とニュールンベルク裁判なわけで。
NHK人間講座 いま平和とは」
なんて本はたった588円で買えて1日で読める。
>勝とうが負けようが戦争をやったこと自体を罪にして軍人吊るし上げてる国って日本くらいじゃないの?
ドイツはどうなってるのか調べて見たら?

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名前: Inoue | 2005年10月22日 午前 09時03分

 傍で見ていても、このコメントの切り返しはどうも良くないですね。半ば喧嘩を売っているみたいなもので、言われた方々も納まりがつかなくなってしまうだろうことは当然予想できます。


 でInoue氏が何を言いたかったのかというと、どうやらこういうことで

 「勝者の裁きである」「戦争の個人責任を問うのは事後法である」「責任追及が勝者と敗者でダブスタだ」という問題を差し引いても、戦争裁判は積極的な評価に値します。なぜそうなのかは推薦した本を読んでください。100ページもない。

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名前: Inoue | 2005年10月22日 午後 07時51分


 Inoue氏は、おそらく上記コメントで紹介した「哲学者」の方の「国家としての戦争責任の取り方の本質は、戦争加害者の「加害者性」を日本国自身が法的・公的に認知することにある…一番肝心な点」(6/9の日記)あたりとご意見をともにしておられるのだと愚考します。まあどんなご意見でも構わないのですが、それはそれとして「東京裁判は積極的に評価できる」という自説を詳しく述べずに、それはもう自明のことだから的におっしゃったのはやはりやり方がまずいと思いました。
 ご自分の頭の中の脈絡だけで先走って語られているので、論点もなかなか噛みあわず、言葉もだんだん汚くなってきてしまいます。

 だから何度も書いているでしょうが。


 WW2の戦争裁判は、「勝者の裁判」であり、「事後立法による裁き」であり、「戦勝国と敗戦国でダブスタ」であると。
 素人の戦争裁判批判はいつも、上記の3つの「キズ」を言い立てるだけで、戦争裁判の積極的側面に一切眼をつぶっている。これが果たして建設的な態度でしょうかね。
 どういう積極的側面があるかは、コメント欄で書くにはヘビーすぎるし、私が解説するよりも、はるかにましな国際法の本がいくらでもありますので、それをごらんください。


 「事後立法云々」と言い立てて、東京裁判批判を繰り返すのは、渡部昇一ロッキード裁判批判みたいなもので、自分の無知をさらけだしてるだけだとなぜ気づかないんですかね。

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名前: Inoue | 2005年10月23日 午前 11時37分


 ここまで放言されるとまだまだ長く続きそう…と思っておりましたら、Inoue氏は議論をご自分のブログに誘導。これが今朝のことです。

拙い文章ですが、「なぜ国家犯罪の個人責任を認めなくてはならないのか」を書いてみました。小田嶋さんのブログを汚し続けるのも気がとがめるもので。
http://inoue0.exblog.jp/

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名前: Inoue | 2005年10月24日 午前 08時25分


 ちょっと野次馬根性でInoue氏の記事WW2戦後処理まで読ませていただきましたが、これでは論争の相手先の方々も納得できないような気がいたします。少なくとも「素人の戦争裁判批判」とまでおっしゃるほどの十分な論拠は私には見つかりませんでした。(Inoue氏がなぜ東京裁判を評価したいと思っておられるのかはちょっとだけわかったような気がいたしましたが…)

 WW2軍事法廷は、法律家の視点で見れば非常に問題の多い裁判ではあったが、国際刑事法の進歩という観点から見れば、必要不可欠な裁判なのである。

 というInoue氏の論点は、東京裁判を評価する一つのポイントの開陳にはなっても、東京裁判批判を笑う(というかやめさせる)論拠には全然なっていないなあと単純に私には思えたのでした。
 残念ながらInoue氏のブログではコメントは受け付けておられないようなので、このちょっとした議論はここで立ち消えかもしれませんね。小田嶋さんのところで延々続くのもよくはないですから、潮時かもしれません。ただ興味を持って見続けた私としては、ここにちょっと備忘として記しておこうと思います。