塾での事件で思い出したことなど

 私が(小)中学生相手の塾講師バイトをやっていたのはかなり前で(その後予備校もやりましたが)、当時中学生だった子もそろそろ20代の終わりぐらいにはなる頃です。小学生のクラスはほんのたまに夏期講習などで担当するくらいで、ほとんど中学生相手でした。今回事件があったところなどより小さな塾で、本部校舎の他はささやかに2教室ぐらいのものでした。塾長以外に専任の講師が二人。あとは学生バイトが5,6人(私は卒業後も数年やりましたが)。専任で固めた塾は授業料も高くなり、中小のお手頃なところはどうしてもバイト講師が多かったと思います。
 いざ思い出そうとしても、塾長とか当時の生徒は思い出せますが、一緒に働いていたバイトはどんな人がいたか…何か記憶が消されてしまったかのように出てきません。ちょうど自分がぐれていた時でもあり、バイト同士では全く遊びませんでしたので、印象が殊更薄いのです。それ以前に行っていた喫茶店のバイトでは歴代のメンバーのほとんどを覚えていますし、未だに賀状のやり取りもあります。「私の結婚式に出てもらう」という空約束(笑)は、20年ちかく?経った今でもまだ有効だと思っています。


 その当時も子供たちと講師たちは馴れ合っていましたし、そうでなければ人気も出なかったのは事実です。しかしいざ授業になったときにどれだけ「まじ」なところを見せられるか、どれだけ真剣に怒れるかというのは年季がものをいっていたと思います。講師をやって一年や二年では、なかなかそういう切り替えが難しかった覚えがありますね。
 確かに資格も何も無く就く「教職」ではありますが、一年を過ぎて続けられる人はそれなりに「保つ」という感想でした。私は教えるのが好きな方でしたので、塾長に本採用を何度かもちかけられて軽く悩んだこともありましたっけ。


 ノウハウは基本的には自分で考える。ただ塾長がバイト講師をしょっちゅう食事とかお酒に連れて行って、そこで様子を見たりアドバイスしたり…。そのぐらいの規模といいますか、そういうアットホームな中小の塾でしたから、わりに私も居心地よく続けられたのです。(まあ逆に塾長と反りがあわなかったりすると、とても居辛いぐらいの規模だったのですが)
 一つだけ自分に課していたのは「絶対にえこひいきしない(見せない)」ということでしたね。もちろん馬が合うとか合わないとか、可愛げを感じる感じないとか、いろいろな生徒がいましたが、結局誰かをひいきするような講師は敬遠されますし、授業の雰囲気も悪くなるということは見聞きしたりほんの少し経験したりしました。ですから個別の対応もできるだけ均等にするとか、声をかけがちな子じゃないところに日によって重点的に目をかけるとか、そこは「プロらしくあろう」と努めました。そしてもちろん生徒たちとは教室を出ればプライベートは切り離すという感じで、ちょっと教室に残って雑談ぐらいはしましたが、いい距離感はあったと思います。


 バイト講師が生徒(しかも小学生)を殺したなど、想像もおよばぬ感じですね。殺さねばならないほどの感情を一人の生徒に持つということ自体がどうにも理解しがたいです。
 とても残念な事件でしたし、今後塾講のバイトにもいろいろ規制とか考えられてしまうのでしょう。犯人にはきっちり落とし前をつけて欲しいですが、何にせよ寂しい感じを抱かせる事件でした。