ジャック・ル=ゴフの論文

 あんとに庵◆備忘録1/07のコメント欄でぐりおさんが紹介していた、ル=ゴフの論文が入っているという『アナール論文選4 都市空間の解剖』、新評論、1985、は持ってました(1「魔女とシャリバリ」、2「家の歴史社会学」、3「医と病」も)。他の本を探していて(実は吉川英治新書太閤記』笑)某所の奥から見つけたのでした。
 今、手元にあるので少々内容を紹介しますと、これは修道会の歴史を直接扱っているものではなく、中世フランスの都市を研究する上で托鉢修道会の動向が一つの鍵になるであろうということで始められた調査の報告でした。
 題名は「中世フランスにおける托鉢修道会と都市化(Ordres Mendiants et Urbanisation dans la France Medievale)」です。訳者(江川温*1氏)による付記がそこらへんの状況を端的に語っています。

 …ル=ゴフは、高等研究員第六部門歴史研究センターを代表して、1968年に『アナール』誌上に、フランス中世都市の体系的調査のためのひとつの提案を発表した。…ここに訳出したのはその調査の中間報告である。


 …ル=ゴフによれば、中世フランスの都市現象を数量的、体系的に測定する方法は今まで存在しなかった。
 …必要とされているメルクマールは比較的発見が容易で数量的操作に耐えるとともに、都市がもつ諸機能を束ねたものとしての「都市的性格」に、内的に関連したものでなければならないのである。
 ル=ゴフはこのメルクマールを托鉢修道会の分布現象に求めようと提案する。より具体的には、彼は二つの作業仮説から出発しようとする。①中世フランスの都市分布図は托鉢修道会に属する修道院の分布図と一致する。すなわち托鉢修道院は都市にのみ存在し、また都市は必ず托鉢修道院を持つ。ただしこれはあくまでも作業仮説であって、百パーセント妥当しなくてもよく、例外が少数でそのほとんどが説明可能なものであればよい。…②都市的中心の人口論的、社会的構造と、そこにおける托鉢修道院の立地とは関係がある。具体的には托鉢修道院は、旧い中心から見れば周辺部に当たるような、新しく都市化の進行する部分に定着する。…


 …このように立てられた調査プログラムを実施するに当たっては、さらに多くの技術的問題を解決することが必要である。また個々の托鉢修道院の設置についても多くの歴史学的、社会学的問題を考察しなければ、そのメルクマールとしての特質の理解や変動の解釈に進むことはできない。たとえば修道院設置に際してその地域の諸勢力や状況が演じる役割、修道会の修道院配置政策、都市および都市化の諸類型と修道院設置の様態との関連、後背地の意義、托鉢修道会と都市文化の関連等の諸問題である。これらのうちのあるものは、ここに訳出した中間報告でも分析を加えられている。…

 一読後ほとんど内容を忘れていたので、また読んでみます。 

*1:温のつくりは囚に皿