ドン・キホーテ

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 ドン・キホーテ (Don Quijote, Don Quixote ) はスペインの作家、ミゲル・デ・セルバンテス (Miguel de Cervantes Saavedra、1547-1616) の小説、または、その主人公の名前。(Wikipediaの項目

 セルバンテスの不朽の名作『ドン・キホーテ』は聖書の次に売れている本とも言われ、現在岩波文庫で前編(1〜3)各798円、後編(1〜3)各798円の全六巻が入手可能です。訳者牛島信明氏の新訳は評判も良く、これは買わねばと思っております。実は私が読んだことがあるのはジュブナイル版のみ。しかも相当昔のことです。でも「泣けた」ことは憶えております(笑)
 作者のセルバンテスについては次の記述をみつけました。

 1547年にこの貧しい地方(引用注:ラ・マンチャ)の貧しい家に生まれたセルバンテスは、71年、一攫千金を狙ってスペインがオスマン・トルコを破った歴史的なレパントの海戦に参加する。そのとき一生左手が使えなくなる負傷をするものの、大いに活躍して「レパントの片手男」と称えられる。ところがスペインへの帰途に身代金目当ての海賊に捕えられ、スペインに帰れぬまま5年を過ごす。帰国後は困窮のなか、無敵艦隊の食糧徴発係を経て、滞納税金の徴収史をしているときに無実の罪で投獄される。その獄中で書き出したのが、『ドン・キホーテ』といわれる。
カンポ・デ・クリプターナより)


 前編「El ingenioso hidalgo Don Quijote de La Mancha(英知あふれる郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)」(1605)はご存知風車に突っ込むドン・キホーテが描かれるもので、騎士道物語を読みすぎて現実と虚構の境を見失った下級貴族の主人公が「伝説の騎士という自分」を頭に描いて「英雄的」な旅に出かける物語。おなじみ従者のサンチョ・パンサ、やせ馬の「名馬ロシナンテ」、妄想の「ドゥルシネーア姫」などなど思い込みの大冒険が綴られます。


 後編「Segunda parte del ingenioso caballero Don Quijote de La Mancha(英知あふれる騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)」(1615)で特筆すべきは、本書ではすでに前編の小説が出版され、それが有名になっているという設定が入り込んでいるということでしょう。つまりメタ・フィクションの構造があるということ。これは何も作者が実験作に意欲を持って取り組んだというものではなく、前編の好評で偽作の「続編」が出たために、作者がそれならばと本物の「続編」を対抗して書くことで図らずもこうなったらしいです。

 唯一の 神 の<真理>が解体され、人間によって分担される無数の相対的真理と化したのである。かくして 近代 の世界が生まれ、それとともに、その世界のイメージであり、モデルである小説が生まれた。
ミラン・クンデラ チェコスロヴァキア生れの作家・文芸評論家)