隠微なセクハラ

セクハラ教授…深夜に呼び出し抱きつき、合宿でキス

 岐阜大は16日、男性教授が指導を担当した女子学生にセクハラ(性的嫌がらせ)を繰り返したとして、停職7日の懲戒処分にした。


 岐阜大によると、男性教授は2004年7月から05年11月まで計4回、深夜、女子学生をスナックに呼び出して抱きついたり、合宿先でキスを迫るなどした。男性教授は「自覚が足りなかった」と話しているという。


 岐阜大は「(事態を)重く受け止めている。学生との接し方を早急に再考したい」としている。
ZAKZAK 2006/03/17

 ちょっと前の話ですが「わかりやすい」セクハラの例で引きます。まあ、きょうびこんなことをする人がまだいるのかとびっくりというところでしょうか。相応の罰を受けてしかるべきです。
 ただし大学が、教員の「学生との接し方を早急に再考したい」とするのはどんなものでしょう。雇用者責任を考えようとする態度はわかりますけど、合宿先でキスを迫るとかいう行為が「今までの教員と学生との(通常の)接し方」に含まれていたとは考えられないわけですから、再考するという表現は微妙です。


 それに真の問題となるようなセクハラ(アカハラ)は、なかなかこのようにわかりやすくはないと思います。同僚女性とここらの話をして、問題の多い例としてはだいたい次のようになるのではないかと一致しました。

 それはどこまでを考えているのかわからないような「好意の表現」から始まり、傍で見ていてもちょっとえこひいきと思えるぐらいにエスカレート。学生の方は受け流しつつもやや不安になる。で、その不安の解消のために、はっきり迫られたわけではないけれど(←ここがポイント)自分でもさり気なく距離を置こうとする。
 その微妙なニュアンスを感じた教員の側が、突然手のひらを返したように厳しい態度になる。その厳しい態度は、指導の面などにおいて(他の人全員にやっているとすれば)文句のつけられないようなご立派な理由つきの厳しさで(←ここもポイント)、逆えこひいきとでも言うようにその学生だけが対象となる。
 うまくその教員の指導から離れられるような条件が揃っていればまだしも、往々にしてキャリアを維持するためにはひたすらその手のひら返しに耐えるか、理不尽ではあっても自分から何らかの関係改善に努めなければならなくなる…

 それはことほど左様に微妙な感情の読みというもので成り立つような、裏を取るのがほとんど不可能なような隠微なものだったりします。


 へたに抗議しても「何言ってるの?」ととぼけられるような巧妙さがあるだけに、学生としては息が詰まるように追い込まれてしまうんですね。もちろんその周辺の人たちにはかなりわかるもので(よほど鈍感な人なら見逃すかもしれませんが)、場合によってはその教員の人望がなくなって報いを受けることになるのですが、また場合によっては自分も睨まれるかもしれないと、その教員の態度に怯えて何も言わない(むしろ追従する)学生を増やすことにだってなるのです。


 これは本当は根っこから(大学全体をもっとビジネスライクな雰囲気にするとかいろいろ)変えなければいけないような大きな問題ですが、それが実効性をあげるのを待つとしても、追い詰められている学生には救いがないということになってしまいます。
 そこで知恵を働かせるとすれば、その教員より同格か格上の別の教員をそれとなく動かし、巻き込んでいくという方向もあると思います。その教員が視線を気にせざるを得ないような「第三者の目」を、閉ざされがちな空間に導入するということですね。問題が隠微なだけに、その頼むべき別の教員にも知恵や政治を働かせてもらわなければならないわけですが(直情径行型は逆効果のおそれあり)、適材がいれば賭けてみるだけの価値はある方法です。
 それでもだめなら最終手段。マキャベリズムな方法もあるのですが…。