好きな漢詩

 はてなエスチョン
好きな五言絶句/七言絶句/短歌/和歌/俳句 を教えてください。あんまり現代のものはNGです(出来れば昭和初期ぐらいまででお願いします)。何で好きか、も出来れば書いて頂きたいですけど、ま、その辺はゆるーく。以下は私が好きなうたです。 悠然とほろ酔えば雑草そよぐ 滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ 願わくば花の下にて春死なん その如月の望月の頃 ゆきとけて 村いっぱいの 子供 かな 春夜洛城聞笛 誰家玉笛暗飛声 散入春風満洛城 此夜曲中聞折柳 何人不起故園情

  黄鶴樓      崔邕


昔人已乘白雲去
此地空餘黄鶴樓
黄鶴一去不復返
白雲千載空悠悠
晴川歴歴漢陽樹
芳草萋萋鸚鵡洲
日暮郷關何處是
烟波江上使人愁

昔人(せきじん)すでに白雲に乗って去り
この地、空しく余す(のこす)黄鶴樓
黄鶴は一たび去ってまた返らず
白雲千載、空悠々たり
晴川(せいせん)歴々たり漢陽の樹
芳草(ほうそう)萋々たり鸚鵡洲
日暮郷関(にちぼきょうかん)いづれの処か是なる
煙波江上(えんぱこうじょう)人をして愁へしむ


 この七言絶句には名訳がつけられています。

 そのむかし しら雲に乗り 人は去りゆき
 ここにいま 残るのみ 鶴のたかどの
 鶴は飛び去り ふたたびは 帰ることなく
 しら雲ぞとこしへに 空にただよふ
 川晴れて 漢陽の樹々あきらかに
 草萌えて 鸚鵡の洲 しげりしげれり
 暮れゆくや ふるさとは いづこなるべき
 ゆふ霧らふ 江波に 愁ひはてな
土岐善麿 『新訳詩抄』)

 むしろこの訳にふれたので『黄鶴樓』が特に好きになったと言えるかもしれません。

黄鶴樓伝説

 昔、武昌の辛氏の酒屋に、身なりの悪い男が毎日やって来て酒を飲んでいた。男は酒代を払わずに半年ほど飲み続けたが、辛氏は文句も言わなかった。男はそろそろ退け時と、辛氏の好意に謝して酒屋の壁に橘の皮で黄色い鶴の画を描いて去っていった。酒屋に来た人たちが手拍子をとって歌うと、不思議なことに黄鶴はそれに合わせて舞った。それが評判となり、辛氏は十年ほどの間に巨利を築いたという。
 十年目に男は再び現れた。男が笛を吹くと壁から黄鶴が抜け出てきて、両者は白雲とともにいずこかへ飛び去った。男は仙人だったのだ。辛氏はこの仙人との出会いを記念して楼を建て、黄鶴楼と名づけた。