米朝問題

 NHK大阪放送局コールサイン「JOBK」は「ジャパン 大阪 馬場(ばんば)*1角っこ」の略称である…と落語じみた洒落を聞いたのは、確か小松左京さんの古いSFだったと記憶しています。
 その小松さん、上方落語にご執心で、昭和39年からラジオ大阪で『題名のない番組』という深夜放送の走りのような番組(午後11時からの枠)も桂米朝師匠と一緒にされていたそうです。そこらへんのオモロイいきさつなどが「落語とSFの意外な関係」というasahi.comのコラム記事に書かれています。


 なんだかんだ私が落語好きになったのは、かなり昔のSFマガジンとかに書いていた日本SFの作家さんたちの趣味・志向の影響で、特に小松さんのアレが強烈だったので上方落語から好きになり、米朝さんの噺が今でも一番肌に合うような感じがしています。


 その米朝師匠ももう80歳。8月にご自宅で転倒して胸椎骨折で入院されたということを聞いて心配していましたが、どうやら無事退院されたとのこと(記事)。御歳が御歳だけに骨折>入院>呆け(今は認知症でしたっけ)というのが怖かったのですが、何とかリハビリをこなして高座に復帰されることを願っております。


 北朝鮮が何やらやらかすたびに各新聞紙上で「米朝問題」とか「米朝協議」とかの見出しが躍り、その都度私は米朝師匠のことが思われてしかたありませんでした。このニュースを聞いて、なおさら師匠の噺をもう一度聞きたいと思うのですが…。取りあえずその前に小松さんの落語っぽいお話をまた読んでみましょうか。


 上のコラム(というかインタビュー記事)にもありますが、かつて『飢えなかった男』徳間文庫、に入っていた「天神山縁糸苧環(てんじんやまえにしのおだまき)」は特に私にとって永遠の最高傑作です。今出ている本では『高砂幻戯』角川文庫、に収録されています。(>明烏、天神山縁糸苧環、乗合船夢幻通路、反魂鏡などなど、こちらの系統をまとめて入れていますね)


 とにかく良いです。落語好きなら(いえ、でなくてもたぶん)泣けます。気持ちの良い悲恋というか…ネタはあまりばらさないほうがいいかもしれません。ここに出てくる主人公格の落語家さんが、若き日の米朝さん(ほんとはそれは見たことがないので、イメージ的には小米朝)ということなのでしょう。
 落語ってほんとに良いものですね、と思わず言ってしまうほどの「小松左京」の力作だと断言します。

*1:2001年までJOBKの局舎は大阪市中央区馬場町にあった