塾講師による小6女児殺害事件(判決)

■京都・小6女児殺害 元塾講師に懲役18年

 おととし、京都府宇治市の学習塾で、小学6年の女子児童を殺害した当時大学生の元塾講師に対し、京都地裁は懲役18年を言い渡しました。


 被告の元塾講師の男は、これまで法廷で何度も奇声を発していて、裁判では心神耗弱を主張していましたが、京都地裁は完全責任能力を認めました。


 京都府宇治市の学習塾の講師で、同志社大学の学生だった萩野裕被告(24)はおととし12月、塾の教室で小学6年の堀本紗也乃さん(当時12)を包丁で殺害した罪などに問われていました。


 無期懲役を求刑した検察に対し、弁護側は「被告は紗也乃さんに襲われる幻覚に苦しめられ、心神耗弱状態だった」と主張していました。


 6日の判決で京都地裁は、まず犯行直前まで塾講師の仕事を問題なくこなしていたことなどを挙げ、完全責任能力を認定、「監視カメラの電源を切るなど、計画性は顕著だ」と犯行を非難しました。


 一方で、「被告はアスペルガー障害で、ストレスに耐えることが難しかった」とも述べ、懲役18年を言い渡しました。 (後略)


(MBSニュース 03/06 12:48)

 こういう重犯罪で裁判になると、あまりにも責任能力に焦点をあてた弁護が多いように感じます。本当にその全てのケースに「病」が関わっていたのか、疑念の目で見てしまっている自分がいます。
 そして、このケースなどでは責任能力に欠けたところはないと認定しながらも、「アスペルガー障害」という病名を挙げて量刑の情状酌量の根拠にしてしまっていますよね。藪をつついて何とやらで、こういう判決がいくつかでますと「アスペルガー障害」とされている人たちを危険視するような風潮も出かねないと思うんですが…


 被告が本当にアスペルガーだったとしても、それと犯罪あるいは量刑がこの事件に関わると認定できるものだったのでしょうか? 医師の意見書などは出されたにせよ、判事は本当にきちんと理解していたのでしょうか?


 被害者、遺族、そしてアスペルガー障害と診断されている方々のお心はどうなんでしょう。

追記

 より詳しい裁判長の言葉がありました。精神病様状態?


 氷室裁判長は、弁護側の求めで地裁が実施した精神鑑定に基づき、被告が「精神病様状態」にあった局面はあったと認定。また、一時的な精神状態の悪化により、事件の8日前に自宅で被害者の像が見えたことから、像を消すために犯行を思いついたとした。


…「精神病様状態」は恒常的なものではないとし、「犯行当時、心神耗弱だった」とする弁護側の主張を退けた。そのうえで犯行について「余りに残忍で執拗(しつよう)。凄惨(せいさん)さは筆舌に尽くしがたく、極めて悪質」と述べた。


 量刑の理由については、アスペルガー症候群でストレスに弱い被告が、「精神病様状態」もあったという経緯の中で犯行に及んだ▽自ら犯行直後に110番通報しており、自首が成立する▽殺害の事実を認め、被告なりに反省を深めようとしている――などと説明した。 (後略)
asahi.com 03月06日11時06分


 事務的に殺せる、あるいは喜んで殺せる場合を含んで、すべて殺人というものは精神病様状態において為されるような気がしてなりません。まあ、そこらへんは言葉の定義によるのでしょうけど。
 でもアスペルガー障害がこの精神病様状態を導いたと取られかねない説明はどうなんでしょうね。
 責任能力を認めているなら認めるで、「精神病様状態」というような曖昧なものを何故引っ張ってきたのか、よくわかりません。

 アスペルガー障害の診断基準(DSM‐IV, APA)

A.以下の少なくとも2つで示される、社会的相互作用(対人関係)の質的障害: 

 1.社会的相互作用をコントロールするために、視線を合せることや表情、体の姿勢やジェスチャーなどの多くの非言語的行動を使用することへの著しい障害 
 2.発達水準相応の友達関係をつくれない 
 3.喜びや、興味または達成したことを他人と分かち合うことを自発的に求めることがない
 4.社会的または情緒的な相互性の欠如 

B.以下の少なくとも1つで示されるような、制限された反復的で常同的な、行動、興味および活動のパターン

 1.1つ以上の、常同的で制限された、程度や対象において異常な興味のパターンへの囚われ 
 2.特定の、機能的でない日課や儀式への明らかに柔軟性のない執着 
 3.常同的で反復的な運動の習癖(たとえば手や指をひらひらさせたり捻ったり、または身体全体の複雑な運動)
 4.物(対象)の一部への持続的なとらわれ 

C.この障害は、社会的、職業的あるいは他の重要な機能の領域において、臨床的に明白な障害を引き起こす 

D.臨床的に明白な言語の全般的な遅れはない(たとえば、単語が2歳までに使用され、コミュニケーションに有用な句が3歳までに使用される 

E.認知能力発達または年齢相応の生活習慣技能、適応行動(社会的相互作用以外)、および環境への興味の小児期における発達に臨床的に明白な全般的遅れはない 

F.診断基準は他の特走の広汎性発達障害統合失調症の診断によって満たされない