いかがなものか、な戦術

 kmizusawaさんの記事「なぜ石原を支持しちゃうオバサンがいるのか(もしくは左派に関する考察)」を読んで、おっしゃっていることがとてもよくわかりました。この記事の一つの側面は、ちょうど石原氏の名を上げつつ以前に書いたことがありました。(↓末尾に引用。某氏の「STOP THE KOIZUMI」運動がいかがわしく思えて、その文脈で書いたものです)


 ただkmizusawaさんは私が書いたものには無い観点をいくつか挙げられていて、その顕著な一つが「石原批判(の一部)に隠れた優越感」という見方だと思いました。

 左派(右派にもいるが)のダメなところのひとつは、自分と同じ考えを持たない人たち、自分と違う価値観にしたがっている人たちの「センス」を馬鹿にしまくる(自覚はないのかもしれないが)ことだと思う。

根っこの部分は、匿名掲示板などで、生活保護を受けてる人や若年貧困者は皆怠け者だというようなことを言うのと同じ、何やってるかで人格まるごとネガティブに見てけなすような発想とそう変わらないのではないかと思うことがある。向いてる方向が違うだけで。相手が社会的弱者だろうが権力者だろうが優越感に浸って他人を叩くのは気持ちがいいものだ…
  なぜ石原を支持しちゃうオバサンがいるのか

 「STOP THE KOIZUMI」の某氏がすごくいかがわしく見えたのは、彼が「優越感」に浸って独善的に見えたからだったかも…と腑に落ちたような気が…。


 しかし一度そう考えてみますと、この傾向は私には欧米のリベラル層にも見られるものに思えてなりません。「ブッシュ叩き」のような「戦術」(あえて戦術という言葉を使いますが)を見ていて、その個人攻撃・貶めたり笑いものにしたりする感覚がいやらしく感じられていたからです。


 ブッシュには教養が無い。ブッシュの英語は下品だ。ブッシュは馬鹿だ。という取り上げ方や、ブッシュの政権にいる者は頭がよろしくない。ブッシュの支持者は田舎者だ。というような(冗談ぽい)攻撃には閉口させられる気がしていました。 案外そこには、教養があって、上品で、賢くて、都会育ち…の人の優越感がちらちらしていたのかもしれませんね。
 もちろんあちらはあちらでそれに対抗するネガティブキャンペーンなどもあったかもしれませんが、あちらのメディアが盛んに報道し、日本のメディアが喜んで取り上げるのがそういう「リベラル」側の「叩き」だったので、私にはいくら彼らリベラルが正義を標榜していても「ただのいじめじゃん」という具合にも見えていたんです*1
 ブッシュ氏の英語のどこがおかしいか、どこが教養のないポイントかなど、解説でも聞かなければよくわからない程度の私の英語ですが、少なくとも氏がどもったりあわてたりするところを笑いものにするのは趣味がよくないなあと感じられました。


 そしてまたその尻馬に乗るようにして「ブッシュ馬鹿」と同調する日本のリベラルの一部の方々にも、何でひとさまの国のトップをそんな感じで揶揄できるのかなあとちょっとうんざりでもありました。
 もしかしたらこの選挙戦で見かける、ネガキャンで個人攻撃という戦術もあっちのリベラル直輸入のものなのでしょうか? それだったら(あまり時間はありませんが)即刻見直して、もっとフェアに政策論議にかかるべきだと思います。日本の(と限定できるかどうかわかりませんけど)庶民感覚では、たぶんそういう個人攻撃みたいなものが限度を越えると、ただ下品なだけに思われてしまうでしょうから。

…
 これはたとえば石原知事批判の方々にも問いたいものです。前回の都知事選で石原氏は308万票を獲得し、その得票率は70%にのぼりました。他の候補者の名前をまだ覚えてらっしゃいますか? ほとんど石原知事の一人勝ちだったのです。

 個人的には、これほど悪し様に言われる都道府県知事はめずらしいと思います。何かにつけ目の仇にされたような批判にさらされている観があります(放言も多いとは思いますが…)。しかしなぜ彼が支持を受けたか、そして今も受けているかについて、批判派の方は真剣に考えておられるでしょうか?

 小泉氏の支持される点、石原氏が人気を集める点などに思いを至らせないとき、その批判者の方はなぜ彼らが選挙で勝利したかについて合理的な説明ができないようになります。そうなると残された説明としては「選挙民が馬鹿だった」というものしかなかったりするのです。また自分でもその合理性が弱いかなと思うと、今度は彼らがメディアを取り込み、その「宣伝」によって勝利したのだという自説の補強が行われます。「愚民」が「洗脳」されて、あり得ないことが起った…そういう図式の完成です。
…
 そして、もしかしたら次に現れてくるのは、自分の信念が受け入れられないのは「敵」が自分を妨害しているからなのではないかという疑心暗鬼でしょう。ここまで行くと、すでに「愚民」呼ばわりした普通の方々との間の溝は、全く埋め難いものになっているはずです…。
(過去日記:[政治]ラベルの向こう側

*1:私がセンスがない田舎者だという所為もありましょうが