文系の博士は理系の3分の1も出ない

 今年の2月の記事です。
文系の博士号、難しすぎ? 理系の3分の1以下

 博士号は文系の方が理系より難しい――。博士課程の修業年限内に学生が博士学位をどれだけ取得できたかを文部科学省が初めて調べたところ、文系の学生の取得率は理系の3分の1以下であることがわかった。博士号については「理高文低」と言われてきたが、それを裏づけた格好だ。文部省は「文系は低すぎる。対策を考えてほしい」と話している。
(中略)
 対象となった学生1万8516人のうち取得者は7912人で、平均取得率は42.7%。分野別では、最も高かったのが医学・歯学などを含む保健の56.3%で、農学53.3%、工学52.8%、理学46.3%が続いた。
 これに対し、人文科学が7.1%、社会科学は15.2%と文系の両分野がワースト1、2位を占め、理系の3分の1以下の水準だった。


 大学が学生に博士号を与える条件は、「自立した研究ができる能力」があること。理系の各分野ではこうした考えが浸透しているが、文系の分野では約120年前の制度発足以来、「功なり名を遂げた人」に与える意識が根強く、理高文低の一因となっている。(後略)
asahi.com 2007/2/12)

 なんとかまだリンクは生きていて記事は読むことができますが、このページの「図」は消えてしまっていますね。この記事に添付の「分野別の博士学位授与人数と授与率(2005年度、文部科学省調べ)」の棒グラフでは、「保健」が授与人数3008人(授与率56.3%)、「農学」が654人(53.3%)、「工学」1601人(52.8%)、「理学」514人(46.3%)、「家政」21人(32.8%)、「芸術」51人(32.3%)、「教育」73人(20.4%)、「社会科学」233人(15.2%)、そして「人文科学」101人(7.1%)(「その他」1653人(38.8%))と、なっていました。


 でも文系の博士号の授与率が低い…というところを問題視して、もっと高くという主張が為されるのにも残念ながら与し得ない気もします。これ以上のドクターが作られても受け皿が無い(というより年々縮小していっている)のが現実ですから。
 文系の場合は修士段階ですら一般企業に好まれるケースは少ないでしょう。結局「入院」がその人の社会的な幸せを保証するものではないというのが、理系以上にはっきり言えるわけです。本気じゃない…モラトリアム的な進学の場合を別にしても、多くの場合本人のキャリアにとってマイナスにしかならないという状況は、長い目で見れば文系の研究分野の衰退にしかつながらないでしょうね。
 せめて修士以上のそのキャリアが明確に小中高あたりの教職において評価され(教育関係の専攻ではなくてもです)、悪くてもそちらの道には行き易いというような対応が為されれば(文系理系を問わず)いくらかの状況の改善につながるのではとも思うのですが…。


 ちょっと前に文系の院生をストイックなボクサーに譬えたりしたのですが、次のような記事を見るとどうにも辛さがいや増すような気がします。
東洋王者の元プロボクサー逮捕 通りすがりの男性殴った疑い

 福島署は13日、口論となった男性の顔を殴りけがを負わせたとして、傷害の疑いで、元プロボクシング東洋太平洋フェザー級チャンピオンで、土木作業員、歌川善介容疑者(58)=福島市笹谷下成出=を逮捕した。


 調べでは、歌川容疑者は酒を飲んだ後、13日午前0時半ごろ、福島市置賜町の路上で通りすがりの男性(39)と口論となり、顔を殴り全治5日間のけがを負わせた疑い。歌川容疑者は「そんなことはやっていない」と容疑を否認しているという。(後略)
(産経 2007.11.13)

 四度防衛に成功した東洋王者も、そのキャリアが何にもならず肉体労働で糊口を凌いでいる。そして暴力沙汰で逮捕*1です。
 文系で博士号を取ってもそのキャリアが何にもならず、全く関わりのない分野で糊口を凌ぎ、そして…というケースもありそうで…。

*1:このケースでは本当に罪があると確定したわけではもちろんありませんが