生真面目な思考

 …大学生のころ、雑誌のコスメ特集に「女性が化粧もせずに素顔をさらして外を歩くなんて犯罪ですよ」と書いてあるのを読んで、「しかし、最初の化粧品はどうやって買いに行けばいいのだろう?」と考えこんだものだ。
 「そうだ、たしか、天袋の衣裳ケースのどれかに目出し帽があったはず!」と思い出して、探したけれど、見つからなかった。見つからなくて、良かったのか悪かったのか。
 見つからなかったおかげで、しばらくどこへも行けなくて、食糧が尽きて困ってしまった。でも、見つかっていたら、思いきり怪しい格好でコンビニに押し入ることになっていたかもしれない。
 (ニキ・リンコ『自閉っ子、世を渡る』花風社)

 「30代でアスペルガー障害と診断された」翻訳家のニキ・リンコさんの本。ところどころ巧まざるユーモアがあって面白いのと同時に、本当にいろいろなものの見方があるなと目を開かされるところがたくさんでした。


 すごく律儀な思考過程をする人のことを知っておけば、その面では案外話を通じさせる工夫ができるだろうと思えます。自分にも確かにそういう生真面目さ(悪くすると融通の利かなさ)はありますから、程度の問題で想像を働かせることができますし…。