不用意な発言

 汗をいっぱい流せるという触れ込みのトウガラシ入りの入浴剤でお風呂に入りながら、唐突に叔父のことを思い出しました。うちの母の兄弟は五人で、一番上の男の子は乳児のうちに亡くなって母が先頭なのですが、次に男、女、そして末っ子の男子と続いていて、思い出したのはこの一番若い叔父のことです。
 若いと言いましても団塊の直前ですからもうとうに60は越えているのですが、その叔父が若いときに不用意に言ってしまったことがいまだに親族で話題になるのです。
 それは、ちょうど叔父が思春期のあたりで、すぐ上の姉(この叔母は何ちゃら小町的美人だったと言われているのですが)とどちらが先にお風呂に入るかという話になった時に、


「俺、後でいいよ。若い娘のエキスの出た風呂に入れるから…」


 まあ若さの感じられない親爺ギャグです(笑)。本当に姉萌えだったのか、あるいは順番を譲るのに照れてそんなことを言ったのか、いまとなっては(本人が絶対に言わないので)わからないわけですが、この話が「お風呂に入る云々」の話題が出るたびに親戚一同の間で蒸し返されて、もう半世紀も叔父は言われ続けているのでした。可哀想というか何というか…


 うかつに「おもしろ発言」は親族の前でできないなと、実は私も小さい頃から用心したりしてました(笑)
 急にそんなことを思い出した入浴でした。夕方から雨が降り出して、少し気持ちのよい風呂上がりです。