上手な情報収集

 面接の下準備の工夫という感じの、昨日の「伺ったお話」の続きなのですが。
 志願者、面接を受ける本人が「自分を良く見せようとする」のは当然のことです。また、志願者の周囲の人も往々にして第三者ではなく、志願者の情報を聞けば「よく言ってあげようとする」のも当たり前のこと(社会に出ればいろいろありますが、たとえば大学受験者のことについて高校の先生に聞く場合などが想定されています)。

 それを適度に割り引くというのは難しいことですし、人物評価のためにはできるだけいろいろな情報を集めたいところ。そこで考え出されたのが、人物表現をイメージの良い言葉で対にして置き、傾向性を(善し悪し抜きで)教えてもらおうという手法だそうです。
 たとえば次のような「問い」が用意されます*1
 これについて各々どちらの項に当てはまるか聞こうというのがポイントです。

知りたい内容 A項 B項
外向性 1 何事にも積極的に取り組む 1 物事を慎重に進める
  2 活発で行動力がある 2 謙虚ででしゃばらない
  3 冒険心がある 3 注意深く偶然性に頼らない
  4 誰とでも積極的につきあう 4 少数だが深い友人がいる
協調性 5 他人と協調していくことが得意 5 仲間内の和よりも互いの考え方の違いを尊重
  6 同情心に厚い 6 自助の精神を大切にする
  7 物わかりがよく他人とのコミュニケーションを大切にする 付和雷同に流れることなく主張すべき自分の考えは貫く
  8 相手の立場に立って考えようとする 8 できるだけ自主的な、独立した行動を重んじる
勤勉性 9 計画的で几帳面である 臨機応変に対応する能力が高い
  10 義務的な仕事を進んで引き受ける 10 好きなことやるべきと決めたことに一生懸命取り組む
  11 困難なことにも辛抱強く努力する 11 達成困難な時はうまく気分転換してあきらめることができる
  12 決められた約束を良く守る 12 既存の慣習にとらわれない
情緒安定性 13 くよくよしない 13 自分の行動をよく反省し改めようとする
  14 明朗で陽気である 14 繊細で感受性豊かな心を持っている
  15 大舞台でもあがらない 15 大事な場面では緊張する
  16 自分に対して寛容である 16 自分に対して厳しい

 

 これを本人や周囲の人に伺って、性格の傾向性を(ごまかさずに)知ろうというもの。
 うまく考えたものだなあと感心します。
 面接者が「価値判断」を避けようと考えても、受ける側は「明るい方がいいんじゃないか」とか「コミュニケーション力があると思われた方が有利だろう」とか勝手に考えてしまうもの。そうじゃないんだよと見せることができる質問さえ作れるならば、これはとても「嘘」のつきにくいシステムになっていると思えます。


 ところが、これに似た質問を某大学が高校の先生に渡して回答をお願いしたところ、普通対立していて選ぶはずのないA項とB項の同番号の問いに○をしてきた人がいらっしゃったそうで、何も考えていないのか、あるいは受験者本人が非常に複雑で外から捉えにくい性質を持っているのか判断に苦しむ場面も出てきた…というオチのような話もあったそうです…。

*1:この「知りたい内容」の区分は、富山大の村上宣寛氏の「主要5因子性格検査システムに基づきます。ただし「知性」項目についてはポジティブな対立項を挙げにくいのでオミットしています。