外国人労働者の状況

 まず目先のここらへんの状況をどうにかできないのならば、多文化共生云々など話しても始まらないことと思います。雇用状況が悪化した時、日本に働きに来た外国人は二進も三進も行かないことになるだろうことは容易に想像できたのですが、彼らを働かせていた工場や会社が責任を持てないということなら、外国人労働者を「導入する」とかいうことは最初から無理な話なのではないかと思いました。
日系人の離職者急増 リストラの標的に?朝日新聞

 自動車や機械など輸出産業の業績悪化を受けて、工場で働く日系人らの離職者が急増していることが11日、厚生労働省の調査でわかった。9月の新規求職者のうち日系人の数は計1千人前後で、前年同月の2倍以上にのぼった。このため、厚労省は、日系人の多い9地域のハローワーク(職安)で通訳を倍増させるなど、対策に乗り出す。


 厚労省は先月、浜松市や愛知県豊田市豊橋市群馬県太田市など、日系人が多く住む9地域の職安に、日系人の雇用情勢を聞き取り調査した。


 多くの日系人が自動車や機械産業で働いており、金融危機を受けた業績悪化で、雇い止めや解雇が相次いでいる。日系人は日本語を話せない人も多く、再就職が難しいという。(後略)
(11月12日)

 目先の人件費抑制に使えるからと彼らを雇っていた側が、いざ景気が悪くなったからと彼らを放り出すのはあまりにも無責任とは考えます。しかし余力がないところに一緒につぶれろとも言い難いのは確かです。もともとこういう問題があるのならば、それこそ安い労働力として彼らを受け入れること自体が間違っていたのではないかと見えてしまいます。
解雇の波、日系人にも打撃(MY TOWN栃木 朝日新聞

 雇用不安の深刻化は、県内で働く日系人にも暗い影を落としている。秋口から職を失う人が続出している一方、生活基盤が日本にでき、働き口がなくても簡単に帰れない人がいる。日系ブラジル・ペルー人が集まる真岡市を歩いて聞いた。(才本淳子)


 真岡市は人口に占める外国人の割合が約5%と県の市町で最も高い。約3600人いる外国人の7割は日系を含むブラジル人とペルー人だ。市内に集まる自動車関連工場で働く人が多い。


 同市内のハローワーク真岡。定期的に外国人専用の窓口が開かれている今月中旬のある日は23人が相談に訪れた。1日の相談者は前月と比べ倍近くになっているという。
 その一人、日系ペルー人3世の男性ヤマダ・マルコさん(45)。派遣社員として市内の自動車部品工場で1年半働いてきた。だが、同じ日系ペルー人やブラジル人など約50人と共に9月初めまでで契約が打ち切られた。それ以降、約2カ月間、マルコさんは職を探し続けているが、まったく見つからないという。


 真岡市に10年前から住み、あれこれパートで仕事をしていたという日系ブラジル人3世の女性、キワキ・マルタさん(42)。勤めていた弁当のおかず詰め工場のパートも9月で解雇された。「こんなに仕事がないのは初めて」と嘆く。ハローワーク担当者は「何とかしたいが日本人にも求人がない現状。外国人の求人はゼロに等しい」と話す。(後略)
(11月19日)

 目についた記事には無い地名、群馬県太田市大泉町、愛知県豊田市でも状況は似たり寄ったりなのではないでしょうか?
日系派遣社員の解雇急増 浜松では救済団体設立へ静岡新聞

 米国の金融危機に端を発した世界的不況の直撃を受け、製造業で派遣社員として働いている日系人の契約打ち切りが県内でも急増している。母国に帰国できず、仕事を探し回る日系人たち。苦境に立つ浜松市日系ブラジル人の間に、失業したブラジル人を救済しようという動きも出始めた。


 「ブラジルへ帰るための飛行機代もない」―。浜松市中区ハローワーク浜松(浜松公共職業安定所)を訪れた日系ブラジル人の女性(32)は表情を曇らせた。飛行機代がたまれば帰国するつもりだが、2カ月間、職を探しても見つからない。妻子と暮らす別の日系ブラジル人男性(34)は「子どもが大学に入るまでブラジルに帰れない」と相談の順番を待つ。


 同所には連日、職を失った日系人らが押し寄せ、相談件数は昨年度の倍に上る。県西部の外国人派遣社員が多く加入する労働組合支部にも、解雇通告を受けた日系人派遣社員が毎日のように相談に訪れる。同市中区のプレス加工の町工場には外国人が「仕事はないか」と直接訪ねてくる。


 同市を拠点に取材活動を続けている在日ブラジル人向け雑誌の記者、樋樫マリさんは「家賃を払えず、ホームレスになるブラジル人も出始めた」と危機感を強める。(後略)
(11月20日

 それこそボランタリーに彼らを少しでも助けようという動きがあるのは良いこととは感じます。でも結局景気が良くなって雇用状況が改善する以外に、本当の解決策があるとも思えません。


 ここは一つスペインで行われた試み、一定のまとまった金額を給与して外国人労働者に母国に帰ってもらうという政策を考えるべきではないでしょうか?
 ⇒スペインの海外移民自発的帰還計画

 移民に対するスペインのラディカルな計画(BBC


 もし彼らが自発的に母国に戻り三年の間スペインに戻らないとした場合、(その)外国人たちは典型的なケースでおよそ18000ユーロ(14200ポンド)の一時払い金を得ることになる。
 このスキームはスペインと年金協定を結んでいる19の非EU国家の市民との間に適用される。

 このまま日本で路頭に迷わせるよりは、一時的にでも帰国の選択肢を持ってもらえるというだけでも意味があることではないかと考えます。そのコストは、考え無しに外国人労働者を導入してきた今までのつけということで国が税金によって払ってもよいと思います。
 そしてもう一度真剣に外国人労働者を責任を以て受け入れられるか、受け入れるとしたらどういう分野にどれくらいが適当か、彼らの家族へのコスト(そしてリターン)も含めて考え直す時期が来ているのではないでしょうか?
 リセッションが来ても放り出さないことができるか、それを考えなければ外国人労働者「導入」の問題は軽々に言えるものではないと思うのです。