これもまたQOLに関わる問題

 下のQOLの話につながると思われるものです。
 ⇒強制保護、是か非か ホームレス凍死相次ぐ仏で論争asahi.com

 【パリ=飯竹恒一】厳冬が訪れたフランスでホームレスの凍死が11月、首都圏だけで6人に達し、その対策を巡り論争が起きている。強制的に施設に保護する案が政府内で浮上したが、「個人の自由を奪う」と市民団体が反発し、撤回に追い込まれた。


 6人目は55歳の男性でパリ中心部で28日朝見つかった。これに先立つ26日、サルコジ大統領は「死なせないのは政府の責任、義務だ」と表明。ブタン住宅都市問題相は「気温が零下6度を下回った際に強制的に施設に入れる策」に言及した。


 これが「混雑した施設で盗難や暴力の危険を恐れるよりも外で寝た方が良いと考える人もいる」などとする市民団体の猛反発を招き、フィヨン首相が27日、強制の方針がないことを表明した。(後略)
(2008年12月1日)

 「生存(生命)が何よりも大事」というvitalism(これはSOL論の側)に対して、「それより個人の自由が大事」と考えるある種のQOL論が異議を唱えているという話でもあると考えられます。


 このケースが日本での情報の受け手に戸惑いを感じさせるのは、「生命がとにかく大事で最優先」という建前に対して表立って反論する論者がいない所為かもしれません。生命より大事なものがある…という言辞がとかくイデオロギッシュな(あるいは宗教的―狂信的?)なものとして受け止められてしまうのが我が国の言論状況ではないかと感じています。


 ただし、そういうこちらの「醒めた」見方が気付かせてくれるポイントもあって、このケースでは凍死の危機に直面する当事者の考えはどうなんだろう?という部分が抜け落ちているように見えなくもありません。
 もちろん個々の自由は尊重するが原則は曲げられない>強制反対、とするのがこの市民団体の主張なのでしょうが、主義主張以前に人の心は変わる(弱い)ものであるという感じ方をするのが私たち…とも言えるかも。