ひどい授業
「先生の講義は14回目ですが、そのうち10回は休講でした。法的に対応することはできませんか」
「わが子と同年代の学生たちの前で、夫婦の夜の生活についてあれこれ話すなんて…」
「あの先生は講義中に携帯電話で話したり、メールのやり取りばかりです。講義は眼中にありません」
崇実大学の学内における驚くべき講義の実態が明らかになった。学生たちが数々の事例をまとめて本として出版したのだ。大学が自らの恥部ともいえる講義評価の内容を外部に公開するのは異例のことだ。
これは韓国の大学の話題です(⇒崇実大、講義の実態暴露本を出版 朝鮮日報日本語版)
ただ、隣の国のことだからと笑っていられる問題でもないとも考えます。
実は韓国ではすでに大学進学率が80%を越え、大学という言葉の意味はかつてのそれと異なるものになってきているのです。
⇒韓国の大学進学率、84%に
学歴インフレ現象も深刻化
韓国の高校卒業者は10人に8人以上が大学に進学し、「学力インフレ」現象も深刻化しているという。教育科学技術部が3日、「2008年教育基本統計調査」の結果を発表した。調査結果によると、高校卒業者の大学進学率は83・8%で、前年(82・8%)に比べ1ポイント上がり、過去最高記録を更新した。大学進学率は1970年には26・9%、1990年には33・2%、2000年は68・8%、2005年は82・1%と急上昇してきた。
(統一日報 2008年09月10日)
これは他国に類を見ないほどのものです(⇒Wikipedia:進学率)。(日本でも短大等を含め、ようやく50%を越えるくらい)
この統計の数字の理由には、韓国では日本の専門学校に相当するものも専門大学(2年から3年制の短期大学)として大学の範疇に入っていることなども関係しますが、実際に留学生の人たちに聞いた話からも「学歴」が日本以上に気にされ、就職や結婚などに大きな影響を与える社会だということは窺われ、両班社会(⇒両班とは)の伝統的な(科挙の)競争という側面がいまだに色濃く残っているという面があるのかもと感じています。実利以上に面子を気にするのは日本の比ではないように思えますし*1。
これだけ「大学」の名を冠した教育施設が増えれば、当然のように学生の質云々だけではなく教員の質も変わってくるはずです。変な教員は昔からいるでしょうが、その比率が変わらずとも全体の数が増えれば変なものも増えるわけで、当然目立ってくることになるからです。
大学が大衆化の段階をさらに過ぎ、ほとんど普遍化していけば当然どこの国でも教員の質の低下などということは問題視されることになるでしょう。他人事とも言っていられません。そして当然そうなってくれば、大卒などという学歴も意味を失うということにもなり、大学はそんなに要らないという話にも…。
全国に199校ある4年制大学の中で、今年入学した新入生が定員の70%にも満たなかった大学は20校あった。全羅北道のS大学では2070人の募集定員に対し、実際に入学したのはその22.1%にあたる447人にすぎなかった。慶尚北道のK大学も、416人の募集定員に対して実際の入学者数は28.2%の112人だった。このような大学ではほぼ例外なく、1学期が過ぎると入学した新入生たちも数多く退学する。K大学では昨年の在校生602人のうち、授業料をあえて支払わない自主退学や、休学後に復学しなかった学生の数が371人に達した。つまり途中で学校をやめた学生が全体の61.6%にも達したことになる。これでは到底大学とは呼べないだろう。
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韓国の大学進学率は83.8%で世界でもトップレベルだ。大学卒業者も毎年56万人ずつ輩出されてくる。しかし大学を卒業しても企業の正社員として就職できるのはその56.1%に過ぎず、実際は「88万ウォン(約6万3000円)世代」と呼ばれる非正規雇用ばかりを生み出しているのが実情だ。1年に1000万ウォン(約71万円)を超える授業料を支払う親にとっても、大学は子供の就職に何の役にも立たない。単に家から貴重な金を持っていくだけの存在でしかないのだ。
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(朝鮮日報日本語版 2008/12/30)
(※朝鮮日報日本語版の古い記事は、登録しなければ参照できなくなっています)
*1:ただし私が知り合い話したことのある20人前後の留学生はみなソウル大出身者で、ある意味特定の階層しか知らないとも言えます。この話は割り引いたほうがいいかも。