クロ現「貧しくて学べない」

 昨日のクローズアップ現代「貧しくて学べない」を見ての感想です。
 日本のすべての高校生の中で10人に1人という信じられない比率で学校を辞めざるを得ない生徒がでている、という若干ショッキングな内容の番組でした。
 番組に登場された放送大学の宮本先生はこの状況の原因を

1 過去10年間で日本型雇用(終身の年功序列型雇用)が崩壊し、各家庭の収入が減少した


2 経済的状況が破綻する中、日本の社会保障制度が子育てをする家庭に対してあまりにも弱い。
  ほとんど親任せ(家族だより)である

 ということに求め、社会的サポートが必要であるということを述べておられました。
 これは問題提起として間違ってはいないと感じましたし、所得の再配分的なところで教育にかかる経費を早急にサポートする必要があるだろうなあとは思わせられました。


 ただし、これは「学びたくても学べない子供」に対しては本当にそうなのですが、高校を中退する子供のほとんどがそういう子であるということはないんじゃないかとも考えます。つまり「学びたくなくて学ばない子供」というのが、中退者の相当数を占めるのではないかという個人的感想を持っているのです。


 外的要因をどうにかする。社会的に支援できるところを埋めるという点では同意なのですが、ここには各人の内的要因、学習意欲が湧かないとか高校に意味を感じない生徒への視点が全く欠けているのではないかと思ったのでした。
 もちろん、たとえば中卒では正規雇用の(あるいはバイトでさえも)機会が少ない現状があると番組でも言われていましたし、そこらへんの状況を知らない子にはそれを教えてあげることで「無知ゆえの失敗」はある程度おぎなえるのかもしれません。
 しかしなお、経済的インセンティブだけではつなぎ止めることができない「学習意欲の低さ」も実際にはあるのではないかと私には思えます。
 単純に勉強が嫌だから、そこに意味を見いだせないから辞めてしまう子というものを無視して社会的な支援を拡充させていったとしても、それが確かにバラ色の未来につながるとは言えないのではないかということです。
 30分番組でそこまで要求するのは無理なのでしょうが、これは一面だけにスポットを当てたものではないかと思ってしまったのは事実です。


 本当に難しいものです。取りあえずできることは社会保障等のところで対策を講じることだというのには異論はありません。でもそれを手当てしていったところで、必ずやデッドロックにぶち当たって、そこを何とかする方がより困難なのかもしれないと悲観的に考えているのでした。
 高校まで義務教育に入れるべきだとの意見も目にしますが、本当に中学を卒業した90パーセント以上の子供が高校の勉強に興味を持つか、というあたりはナイーブに考えてもいけないのではないかと愚考。本当は中卒でもそれなりに生きていける社会を作るのが本筋なのかもしれないと思ったりもします。でもその時生じる給与的格差などはどうするのか。これを何とか納得させることも難しいですし、これを無い方向に持って行くのも高等教育へのインセンティブを打ち消してしまうことにもなりかねず、本当に悩みどころだと思います。
 果たして同世代の9割もがあの高校の授業を喜んで(興味を持って)学ぶだろうか、ということを今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか?