誰が得をするかという問い

 ⇒大石英司の代替空港:機械人間はイマココ状態

※ 昨夜のTBSラジオ・アクセス
「永田町を揺るがす西松建設献金事件。与党、野党、官僚、司法、企業、メディア、国民…。今回の問題で、一番得をするのは「誰だ」と思いますか?」


 相変わらず設問が露骨ですよね。

 田中康夫氏がトークパーソナリティー担当の月曜深夜、BATTLE TALK RADIO アクセス(TBSラジオ)では上記設問で通行人へのアンケートからや、会員(アクセス・ピープル)と聴取者からの意見を集め、その集計結果を元に討論(バトル)が行われていたそうです。


 しばしば「結果として誰が得をするのか?」という仄めかしのもとに裏読みが為されることがあります。これが昂じれば陰謀論的な物言いになってしまうもの。
 かつてユダヤ人迫害のきっかけとしても、この手の仄めかし>陰謀論があったそうで、

 たしかに状況が激変しているときに「すべてを説明できる単純な原理」を求めたく思うのは人情の常である。


 フランス革命のあと、それまでの特権を奪われた貴族たちは、なぜこんなことが起こったのかどうしても理解できず、フランス革命そのものが「誰かの私利私欲のための陰謀」であると考えようとした。


 そのときに「フランス革命の元凶」として実に多くの個人、団体がご指名の栄にあずかった。フリーメーソンプロテスタント、イギリス政府、バヴァリアの啓明結社、聖堂騎士団ユダヤ人などなど。


 もっとも有名なのはエドゥアール・ドリュモンが『ユダヤ的フランス』で展開したロジックで、彼はその長大な書物の冒頭にこう書いた。


 フランス革命で利益を得たのは誰か?それこそがフランス革命を準備したものである。すべてはユダヤ人の利益に帰した。ということはフランス革命を画策したのはユダヤ人だということである。」


 この愚劣なロジックをまともに受け取ったひとが当時のフランスには何十万人もおり、そのせいもあって、半世紀あと、彼のロジックはナチによる600万人のジェノサイドに結果したのである。


 この「陰謀史観」を私は知的退廃のもっとも悪質なかたちだと思う。けれどもあまりにも多くの歴史的ファクターが錯綜しているときに「簡単な説明」にすがりつき知的負荷を軽減したがるのは、あまり知的でない人にとっては仕方がないことかなというふうにも思う。


 とほほの日々*1 The days of pains and regrets: 2月23日

 あまり知的ではないと思われたくもありませんので(笑)なるべく自分ではしないように気をつけております。
 それにしても誰がこういう設問を考えたんでしょうね?


 この設問に答えるとしたら、私は「国民」と答えていたかもしれません。

*1:ブログ化以前の内田樹氏の日記