買いだめについて

 今現在の被災地外での品不足。もちろん工場が壊れたり、燃料不足で流通が滞ったりという実際面での影響もあるでしょう。でも結構な割合で集団的な「買いだめ」による一時的な現象ということもあるのではないかと感じます。


 この「買いだめ」などがどうしてここに現れてくるかですが、私は非常時の不安心理が為せるわざであろうと考えます。まず一つには「漠然とした不安を解消するため」に(何か)形あるものを購入して手元に置きたいという心理。そしてそれで少しでも安心を得ようというような(心理学的な)補償行為がそこに考えられるでしょう。
 実際に災害時に必ずしも必要ではない(というか優先度が低そうな)トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの不急の品も不足しているというところに、この「買いだめ」が必ずしも合理的な行動ではない証左が現れているのではないかと思います。
 もちろん無くて困るものも品不足になったりしているでしょうが、必要性という理由と同時に安心を得たいという理由、合理的な理由と非合理な理由が、同時に買いだめによる品不足を現象させているのでしょう。いくつかの記事やブログなどで「買いだめ」を読み解こうとする記事を読ませていただきましたが、合理的に説明しようとするだけではやはり捉えきれないんじゃないかと感じました。
 逆にこの不安心理が影響している部分は、遅かれ速かれ不安の解消がやってきたときに雲散するものと思われます。ですからここは理性的に(無理にでも考えて)自分は買いだめしない、という選択をできるだけ多くの方がしておけばいいはずです。


 またガソリン不足の方では、もちろん実際に供給が減っていたという部分も大きいのですが、ここにはあのよく知られた「コップに水が半分入っています…」というお話、あれで「コップに水が半分しか入っていないぞ」と思えてしまった人がガソリンスタンドの行列を一層長いものにしてしまっているという側面があると思います。
 こちらも不安心理が為せるわざであるでしょう。たとえば自分の車のタンクに油が半分ほどの時、通常時ならば「もう入れなくては」と思う人は決して多くないはずです。むしろ満タンに近いほど燃費が悪いから、少量ずつしか入れないという人も結構知っています。ところが非常時で、いくつかのスタンドが欠品しているのを見せられたりした人が、「タンクにガソリンが半分しか入っていない!」と不安に駆られ、ほんの一、二週も待てば少しずつ回ってくるはずの油を待ちきれず、とにかく満タンに、それができなくてもとりあえず入れられるだけ入れておきたい…と思ってしまったのが、あの長蛇の列を生み出してしまったのではないかと思うのです。比較的小さな地方都市に車が5万台あったとして、それぞれが10リットルでも普段より多くガソリンを入れて走らせたら、それだけで50万リットル余計に必要となるわけです。普段ならスタンドに備蓄しておけるはずの現物が、不安心理で一気に無くなってしまうのですからそれはもうパニックに近くなるのも当然です。


 どちらも、結局「不安を何とか解消したい」ということで自助努力に走った人びとが、回り回って自分たちの首を絞めている行為ではないかと考えています。いずれ不足したものが出てくれば、あっという間に問題は解決するでしょう。そしてまた余裕が出てきた時に、何が問題だったか冷静に再考してもらいたいものだと思います。


 ちなみに連休は自家用車を使わずに(結構歩きました)、今売れないものをターゲットに、(小市民的な意味で)豪遊させていただきました。明日からまた仕事ですが、できるだけ自分は冷静に(品不足の解消を)待っていようと思っています。