ネットで不毛な諍いにならないためのたった一つの方法

 相手(発言者)の意図を(勝手に)想像しないこと


 一つだけ挙げればこれだけだと思います。「言ったこと」以上のものを読み込んで想像するのは各自の勝手とは言え、その自分の想像がいつのまにか根拠になって、執拗に相手に噛み付いていってしまう人をよく見かけます。せめてそれは脳内だけのことにして、「書かれたことだけ」で議論し、意図まで邪推して何か言ってしまうことに謙抑的な人が増えるだけで不毛な議論の半分以上は無くなるでしょう。

二つ目、三つ目を考えるなら

 知っていることを伝えるというのは難しいということを認識する


 上から目線で…とかいう「態度」(そしてそういう受け取り方)が必要以上に不毛なやり取りを長引かせることもしばしばです。それぞれが知っていること、知らないことなど千差万別なのですから、何も一つこれを知っているからエライの何のという話にはもともとならないはず。聞き手が敏感すぎる場合もありますが、ここは一つ「知っている」側が抑え気味に語るという方向でいいんじゃないでしょうか。


 他人に余計な期待をしない


 わかりあえなくてもともと。少しでもお互いに得るものがあったとすればそれで万々歳。そのぐらいにしておけば、いらぬ失望や怒りもわかないことでしょう。この世の90%はわからずやでできています(含自分)。

自分も危ない

 細かいことを言えば、相手と同じ言葉を使っていても定義づけが曖昧であるとか、そこらへんから話がかみ合わないことも多いでしょうし、まだいろいろあると思います。でも結局は上の一つ(もしくは三つ)が本当にできたならば、ネット上の不毛さは劇的に改善するはずです。


 その逆の「相手の意図を邪推して、こういう奴だとレッテル貼りし、あたまがわるいとか高飛車にものを言い、なんでこのぐらいのことがわからないんだと勝手にかっかしている人」も実はそこらへんをうろついています。


 それをうまくあしらうなど通常の人にできるものではありませんから、できるだけそういう人は敬して遠ざける態度を取るしかないでしょう。もしかしたらしばらくしてその人が変わっていることだって(少しは)期待できるかもしれません。
 どれだけイイコトを言ったりしたりしていると本人が思っていても、そんなときの言動は周囲にとっては迷惑でしかないのです。そして、時々自分がそういう人になっていないか立ち止まって考えるのも必要なことです。私もたまにそういう人になってしまっていますから

ヲチ(watch)すること

 お味噌汁を意味する「おみおつけ」が【御御御付け】で、女房詞(にょうぼうことば)の「御付け」*1がさらに丁寧語化していったものだとは結構知られていることだと思います*2。うちの実家では味噌汁のことは「おつけ」と言っていました。方言でしょうが、それこそ古語がストレートに残った形だったかもしれません。


 実は「見守る(みまもる)」というのも似たような重ね方が潜む言葉です。もともと「もる(守る)」自体が「ある場所をじっと見る」行為を指し示す語でした。それに「ま(目)」という語が重なって「まもる・まぼる」となったのです。
 「まもる=目によってじっと見る」でも少々くどいのですが、さらにそれに「み(見)」がついて「みまもる」となった場合、どれだけ見ることに意識がいっているのかと思わないでもありません。


 逆に言えば「まもり」とは本来「見つめる」ことであって、真剣にそこに意識を集中するということが本義であるということはもっと考えられてもいいことでしょう。
 「ヲチする」ということは野次馬根性ということに終らず、実はとても大事なことなのかもしれません。

岩波『古語辞典』
もり【守り】
固定的に或る場所をじっと見る意。独立した動詞としては平安時代すでに古語となり、多く歌に使われ、一般には、これの上にマ(目)を加えたマモリが用いられるようになった。
1 (野・山・島・田などへの)不法な侵入を監視して、そこを守護する
2 (娘や幼児を)守護し養育する
3 すきをうかがい待つ


まもり【守り・護り】
マ(目)モリ(守)の意。広く、宮城の門・人の心・娘・農作物などに害をなすものの侵入を防ごうと、それを監視し、守護する意。モリ(守)が、野・山・関所・渡しなどの地点を監視する意に片寄って使われたのに対して、広く種種のものごとを守護する場合に使われた。
1 様子をじっと見る
2 見張る。防いで守護する。よく見て、かばう。
3 傍に離れず着いている。


旺文社『古語辞典』
もる【守る】
1 まもる。番をする。
2 (人目を)はばかる。うかがう。
―め(目) 人の見まもること。また、その目


まもる【守る】
「ま(目)も(守)る」の意。
1 目を離さずに見る。じっと見つめる。
2 すきをうかがいみる。よく見定める。
3 世話する。かばう。
4 守護する。防ぐ。
5 かたく維持する。

*1:本膳に付けられた汁物の意

*2:他に「おみ」を「御実」と取って、具沢山の汁とする説もありますが