ヲチ(watch)すること

 お味噌汁を意味する「おみおつけ」が【御御御付け】で、女房詞(にょうぼうことば)の「御付け」*1がさらに丁寧語化していったものだとは結構知られていることだと思います*2。うちの実家では味噌汁のことは「おつけ」と言っていました。方言でしょうが、それこそ古語がストレートに残った形だったかもしれません。


 実は「見守る(みまもる)」というのも似たような重ね方が潜む言葉です。もともと「もる(守る)」自体が「ある場所をじっと見る」行為を指し示す語でした。それに「ま(目)」という語が重なって「まもる・まぼる」となったのです。
 「まもる=目によってじっと見る」でも少々くどいのですが、さらにそれに「み(見)」がついて「みまもる」となった場合、どれだけ見ることに意識がいっているのかと思わないでもありません。


 逆に言えば「まもり」とは本来「見つめる」ことであって、真剣にそこに意識を集中するということが本義であるということはもっと考えられてもいいことでしょう。
 「ヲチする」ということは野次馬根性ということに終らず、実はとても大事なことなのかもしれません。

岩波『古語辞典』
もり【守り】
固定的に或る場所をじっと見る意。独立した動詞としては平安時代すでに古語となり、多く歌に使われ、一般には、これの上にマ(目)を加えたマモリが用いられるようになった。
1 (野・山・島・田などへの)不法な侵入を監視して、そこを守護する
2 (娘や幼児を)守護し養育する
3 すきをうかがい待つ


まもり【守り・護り】
マ(目)モリ(守)の意。広く、宮城の門・人の心・娘・農作物などに害をなすものの侵入を防ごうと、それを監視し、守護する意。モリ(守)が、野・山・関所・渡しなどの地点を監視する意に片寄って使われたのに対して、広く種種のものごとを守護する場合に使われた。
1 様子をじっと見る
2 見張る。防いで守護する。よく見て、かばう。
3 傍に離れず着いている。


旺文社『古語辞典』
もる【守る】
1 まもる。番をする。
2 (人目を)はばかる。うかがう。
―め(目) 人の見まもること。また、その目


まもる【守る】
「ま(目)も(守)る」の意。
1 目を離さずに見る。じっと見つめる。
2 すきをうかがいみる。よく見定める。
3 世話する。かばう。
4 守護する。防ぐ。
5 かたく維持する。

*1:本膳に付けられた汁物の意

*2:他に「おみ」を「御実」と取って、具沢山の汁とする説もありますが