同害報復

 どうにもどこかで「弱者−被害者が(一番)正しい」という暗黙の前提が出来上がってるみたいで(フェミニズムやポスト・コロニアリズムなどでも)「誰それが弱者で被害者だった」ということが、いつのまにか「(その)誰それが正しい」という話にすりかわっている気がします。


 私はこの弱者→正義のつながりが「同害報復」に感じる正当感を基にしているとこの頃考えています。


 同害報復とは「やられたらやり返す」ことです。そしてさらに「やられたら<やられた分だけ>やり返す」という強調が加えられたとき、その正当性は一層説得力を持ってくるでしょう。


 有名な話ですが、ハンムラビ法典*1で有名な「目には目を、歯には歯を」という一節は同害報復を言い、さらには<やられた分だけ>という側面が強いと言われています。つまり「同害以上は不正義」という制限をつけることにより正義を担保しているわけです。
 日本の刑法でも正当防衛は権利として認められていますが、やりすぎれば過剰防衛として犯罪行為となります。


 被害者の報復を正義とみる感情が、なにか無条件に「弱者−被害者は正しい」につながっていると思えるのです。

*1:Hammurabi王は紀元前18C頃のバビロン第一王朝(セム遊牧民・アムル人の王朝)の王。チグリス・ユーフラテス両河地方の統一を果たし、法典を制定。この法典はシュメール法を継承、集大成した成文法で、全282条。刑法は復讐法の原則に立つ。1901年ペルシアの古都スサで石碑に刻まれた原文が発見された