負けに不思議の負け無し

 昨日の8時の各局の出口調査分析には驚かされましたが、いささか誤差はあったものの自由民主党の大きな勝利という結果がそのまま確定しました。小選挙区が絡んでの結果ですから、民意の動向はかなり増幅されて現れています。それにしてもやはり岡田党首小泉首相では役者が違ったという印象です。


 勝利した側、自民党もなぜこれだけ勝てたのかわからないようでもあります。解散時に小泉氏を止めようとした人たちにわかるとも思えませんが…。ただ勝った者は結果としての勝利を反省することなど不要ですから、できるだけ誠実に選挙戦で訴えた約束を履行していって欲しいと思います。「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉を地でいったような大勝です。しかし小選挙区制がある以上、これで慢心などすれば次回は逆の結果だってあり得ます。その怖さだけは肝に銘じていただきたいです。


 さて敗北した側ですが、こちらは次に勝利を得たいのでしたら敗因の分析と真摯な反省が必要です。

 負けに不思議の負け無し

 負けた方には必ず敗因があります。これをちゃんと見据えることができないのなら、何度戦っても同じような結果しか求められないでしょう。選挙の勝敗をブームだの「風」だのの所為にすることが許されるのは、勝った側が「謙虚」になるために使う時だけです。負けた方がそれを「風」や「イメージ」の所為にする(たとえば小林興起候補)ならば、あまりにも情けなさすぎます。


 代表を退く岡田代表が会見で「マニフェスト選挙と位置付けてきたが、そのことがいま一歩届かなかった」と言いましたが、こういう分析を見る限り最初から民主党に芽はなかったのかもしれません。選挙公約はいずれの党も出しています。それをどう選挙民に訴えるか、信じてもらえるか、期待してもらえるかも含めてのマニフェストであるはずです。大体膨大で総花的な民主党マニフェストを、どう評価してもらいたかったのでしょう。


 「パラメーターを増やしてコマンドを多くすればゲームが面白くなる」という錯誤があったとしか思えません。民主党は単にゲームバランスを崩してしまったのです。これに対して今回の自民党(というより小泉首相)は、シンプルなゲームにまとめて勝ちを得ました。もちろんこれだけでは飽きられるのも早いので次回単純に柳の下の泥鰌は狙えませんが、傍で見ていてそういう隠喩が頭に浮かびました。


 ただ自民党にしても、小泉首相が来年九月の任期切れで党首を降りるのは確実だと思いますから安閑としてはいられません。誰が後継になってもいささか荷が重過ぎることになります(今回は勝ちすぎと思われるでしょうし)。私は小泉氏を勝負師だと捉えています。もし彼が本当に勝負師なら、未練無く引く時は引くでしょう。どんな時でも自分のスタイルを貫けるのが勝負師ですから、勝ちに恋々として引き際を誤ることはないと思います。


 いずれにせよ審判はくだりました。民主党には「君子は豹変す」という言葉を贈ります。もし本当に二大政党制が良いと考え、それを実現したいのなら(私は必ずしもそれに賛成ではありませんが)、次の顔選びと政策の選択は十分に考えてやるべきです。当面臨時の党首で態勢の立て直しを図るのでもいいのではないでしょうか?変に急いで、とりあえず選んだ人が次の選挙で顔になってしまうというような岡田代表の轍を踏んでしまうと、もう立ち上がれなくなってしまうでしょう。
 自民党はとにかく大勝だったのですから、やりたいこと、やるべきこと、約束したことをあと一年の間にどんどん実行してみてください。それを選挙民は見ておりますから。