「はやぶさ」は舞い降りた(感想)
今しがたまで、NHK総合のクローズアップ現代で『「はやぶさ」は舞い降りた〜世界初 小惑星サンプル採取〜』を視聴していました。(再放送はBS2今晩11:55より)
ゲストにノンフィクションライターの松浦晋也氏(というより「松浦晋也のL/D」というサイトで、JAXAの内部情報を含めて「はやぶさ」情報を発信し続けてくださった方)を迎え、計画実現にもってあずかった町工場の話を絡めて30分ほどの番組としてつくられていました。
いち早く「はやぶさ」のイトカワ着陸、サンプル採取成功を採り上げたのは嬉しいことですし、そこに松浦氏を呼ばれていたのはなかなかよい作り方とは思いましたが、前から気にしていたものとしては不満な点もありました。
一言でいうならそれは「ストーリーを作り、正確な情報を優先しなかった」という点です。「はやぶさ」のイトカワ着陸までの説明で、
- イトカワへの着陸試行で、サンプル採取の一回だけに脚光をあて、他は失敗か存在がなかったように伝えていた
- すなわち11月20日の30分間の着陸が無視されていた
- というより、これをクライマックス直前の失敗として叙述していた
- またまるでその失敗のあたりでリアクション・ホイールの不具合が出たように受け取られる描写だった
- 帰還に向けての今現在のトラブルについては比較的軽く触れただけ
という「不満な点」を感じました。これは正確な事実の描写とはちょっと言えないものです。また松浦氏へのインタビューも決して時間に余裕があるものではなく、せっかくのご出演も「いい話」をする間もなくむしろ早口でフォローを入れるのがせいぜいだったような観も否めません。
- 町工場の話を絡める(あたかもプロジェクトXのミニ版のように)というのは、嫌いな演出ではないが30分番組ではあわただしすぎの感があった。
というのも付け加えたいと思いますが、結局番組のプロデューサーあたりが「ストーリーを作る」誘惑に勝てなかったということではないかと思います。30分という限られた番組でもどうしても彼らは物語を作りたいらしいです。一般受けを考えてのことでしょうが、やはり無理があったと思います。
もちろん松浦さんが何度か正しい情報のフォローを入れてくださっていましたが(タッチダウンの試行は都合6回行われていたこと等々)、印象としては作った「お話」の方が大きく、これを見て初めて「はやぶさ」の詳細を知った人などは絶対誤解しただろうなと思いました。19日から20日にかけての試行の失敗>成功というものがあって、そしてそれを必死に取り戻した26日の再トライ、という話の筋は無視されていましたから。
またこの「お話」では町工場の山崎さんの話の部分が相当を占めていました。もちろんそれはそれで知りたいと思うものでもありますが、それは別の番組で作って欲しいところです。こんな短い番組に入れた所為で印象もあわただしく、木に竹を接いだような気もいたしました。苦労話、感動話もいいのですが、もっと焦点を絞って、何より正確な情報を伝えるようにしていただきたかったです。
真のドラマは、すでに「はやぶさ」の客観的な動きの中に輝いていたのですから…