ダーウィンの悪夢

 ようやく視聴できました。ビクトリア湖ナイルパーチに関わるドキュメンタリーです。
 少々前情報を入れてしまいましたが、できるだけ先入見なしに見ようと思いましたし、フィルムもそれほど「作った」物語を入れているとも見えませんでしたので、内容はすっと入ったと思います。


 一番の印象は、皆懸命に生きているということでした。ドキュメントとしてはそれに尽きると思います。様々な立場や人生を持ちながら、人は今をなんとか生きようとするものだと、フィルムにでてくる人たちも私と同じ人間なんだなと、そういうことが受け取られました。


 次に何がくるかと言えば、やはり貧困、そして愚かさというところでしょうか。
 グローバルな状況に巻き込まれた(これを外来魚のナイルパーチが象徴するとも思えました)国は、どうしてもそれまでと異なる対応をしなければならなくなり、それが世界の「貧しい」部分を引き受けるといった事態になっているように感じます。
 愚かさは、現地の人にも感じます。利己的に、また好戦的に動く状況ではないだろうと言いたくなるところがありました。そしてヨーロッパ人も、武器輸出やUN絡みの商売で儲けていていいのかと(これは確定的ではないですが)少なくともフィルムを見た感想としては愚かだなと思えました。


 これをナイルパーチの問題としてみれば、私たちにもっとも近い問題として感じられるのは日本の湖沼に放流された外来魚、ブラックバスをどうするかということでしょう。
 ただし、このフィルムを見て単純に生態系を守れというのは、それこそそこに住む人のことを他人事として見ることだなあと考えさせられたところがあります。今の彼らからナイルパーチを奪っても、それは彼らの生活をより苦しくするだけだろうと感じました。バスで言えば、釣り客を相手にする商売の人たちの生活を少しは考えて…ということになるでしょうか。


 作為性は強く感じません。むしろドキュメンタリーとしては「作っていない」方のものに見え、好感を持ちます。(これではっきり作為があったとすれば、作り手が下手ということになるのでは)
 繰り返しますが、全体の印象は暗いものとは受け取られませんでした。ドキュメントとして、そこで生きている人たちの姿がしっかり伝わってきましたから。言い換えれば、複雑な生を複雑なままに切り取ったものを見ることができた、という感じでしょうか。希望に満ちたものとは言えませんが、それでも人間は生きていこうとするんだなと、同じ人間として感慨を持ちました。


 こちらで、hazama-hazamaさんの感想も読ませていただきましたが、私の受け取り方はこのようなものでした。BSの放送のことを知らせていただいたことに感謝いたします。