泣いた赤鬼メソッド

 小沢一郎民主党新代表はお顔で損をしていると思います。誰も表立って口にはしないですが、あれは時代劇の悪人面で、腹にいちもつを持つと言いますか後で絶対に切られる人の顔です。しかし悪役商会小松方正小池朝雄黒部進団時朗など様々な役者さんは、悪役面をしていたって悪い人間ではないのもむしろ当たり前のことで、ただキャラクター説明がいらない「わかりやすさ」で一定の役どころをいつも振られているだけなのです。(黒部、団両氏のように若いうちは正義のヒーローでも歳を積んでからはそういう役が来ない人は結構いるでしょう)


 心が顔にでる、というのは往々にして嘘っぱちです。小沢一郎氏の支持者の方々は、表層的なルッキズムを越えた何かを彼に見ているのだと思います。そういう点では「顔がきらい」と小沢氏を嫌うひとよりはるかに真っ当ではないかと感じます。


 ただそういう顔、役どころでなければできない仕事というのもきちんとありまして、優男面で何かを壊すと極悪人呼ばわりされるのですが、悪人面ならやっぱり、またかと言われるだけ。何事も適材適所かもしれません。

寓話

 あるところに赤おにが住んでいました。この赤おには正義感に燃え、自分がこの国を良くするんだと思っていましたが、どうしても一定以上の支持が得られません。それは彼が赤おにだからでした。 にこにこして支持の拡大を狙っても、強弁して政府を批判しても、お遍路にでかけてみても、「今必要なのは政権交代ではないか」と言ってみても、どうにも多数の支持が得られないのでした。

 ここは弱者にやさしい赤おにの家です
 おいしいおかしもよういしてあります
 おいしいお茶もさしあげます

 どうかわたしたちに一度政権をとらせてみてください


「こんなもの、立てておいても、いみがない。まい日、おかしをこしらえて、まい日、お茶をわかしていても、政権をとらせてくれない。ばかばかしいな。いまいましいな。」
 気もちのやさしい、まじめなおにでも、気みじかものでありました。
「ええ、こんなもの、こわしてしまえ。」
 うでをのばして、立てふだをひきぬいたかとおもうまに、じべたにばさりとなげすてて、ちからまかせにふみつけました。いたは、ぱらっとわれました。おには、むしゃくしゃしていました。まるではしでもおるように、立てふだの足もぽきんとへしおりました。


 そこに豪腕の青おにがやってきました。そして赤おにに、一度自分に代表をやらせてみてはくれないかと言いました。「ぼくは豪腕だから、いろいろ壊してあげるよ。そしたらそのときに君が出てきて、ぼくを追い出してくれればいい。そうすれば仲間うちだってきっと結束するし、もしかしたら政権もとれるような党になるかもしれない」
「でもそんなことをすれば、きみは悪ものになっちゃうよ」
「なあに、ちっとも。水くさいことをいうなよ。なにか一つの目ぼしいことをやりとげるには、きっとどこかでいたいおもいか、そんをしなくちゃならないさ。だれかがぎせいに――身がわりになるのでなくちゃできないさ。」
 なんとなく、ものがなしげな目つきを見せて青おには、でも、あっさりといいました。
「ねえ、そうしよう。」



「えい、この悪い青おにめ! お前のせいで党がめちゃくちゃだ! でていけ!」


 人たちは、赤おにのおいしいごちそうを口ぐちにほめたてました。赤おにのすまいが、さっぱりしていて、いやみがなくて、いごこちが、まったくよいということを、だれもかれもほめたてました。
「そんなら、おれもでかけよう。」
「きみは、きのういったじゃないか。」
「まい日、いってもいいんだよ。」
 こんなぐあいで、村から山へ、人たちは三人五人とつれだって、まい日でかけていきました。
 こうして党勢は拡大していったのです。


 そんなある日、赤おには青おにの家へでかけます。そして一枚の貼り紙をみつけるのでした。

 赤おに君。支持者たちとは、どこまでもなかよくまじめにつきあって、楽しく暮していってください。ぼくは、しばらく君にはお目にかかりません。このまま君とつきあいを続けていけば、支持者は、君を疑うことがないともかぎりません。薄気味悪く思わないでもありません。それではまことにつまらない。そう考えて、ぼくはこれから旅にでることにしました。
 
 ナガイ ナガイ タビニ ナルカモ シレマセン。ケレドモ、ボクハ イツデモ キミヲ ワスレマイ。イツカ ドコカデ マタアエルカモ シレマセン。サヨウナラ キミ。カラダヲ ダイジニ シテ クダサイ。
 ドコマデモ キミノ 友ダチ 青オニ


 赤おには、だまってそれをよみました。二ども三どもよみました。戸に手をかけて、かおをおしつけ、しくしくとなみだをながしてなきました。


 これを「泣いた赤鬼メソッド」と言います。