一触即発?竹島問題

 日本の調査船が竹島近海の測量調査に出ている件で、どうにも韓国の興奮が高まっています。これはあくまで二国間の領土問題なので、両国以外のメディアでこれを採り上げているところはまだないようですが(※)、調査に伴って不測の事態があれば、隣国で準同盟国である日韓の紛争として大きく扱われるでしょう。
 韓国の政府やメディアはかなり冷静さを欠いていて、ありもしない幻影の「日本の陰謀・野望」をしきりに強調して国民を煽っているように見えます。
【社説】日本の野望をくじく戦略をおろそかにしてはならない(朝鮮日報)

 日本海保安庁海洋調査船が18日、東京港を出発し、独島(日本名竹島)に近い鳥取県境港に入港した。海洋調査は早ければ20日に独島近海で測量調査活動に入るという。盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領は18日の与野党代表者と会合を開き、「韓国が静かな外交を数年間行ってきた間に日本は攻撃的に変わりつつある。日本政府の船舶が韓国のEEZ排他的経済水域)内に入ってくる場合、侵略行為とみなすほかない」と語った。海洋警察庁は独島近海に18隻の警備艇を配置し、日本の調査船の侵入を阻止することにしている。

 日本の調査船は、独島の北東部の水域を測量する予定だ。これは独島を基点に設定したものだ。日本が対外的には測量活動を掲げているが、その背景には韓国の独島領有権を侵さんとする意図があるのだ。日本の調査船の問題水域に対する測量活動を徹底して阻止しなければならない。(後略)

 で、日本側がなぜこの時期にあの場所の調査をするかということですが、
産経新聞「21日にも海洋調査を開始 竹島周辺で海保船」

 今回の調査は、六月にドイツで開かれる海底地形の名称に関する国際会議に向けデータを収集するのが目的。同会議で韓国側は、この海域の海底地形について独自名称を提案する構えで、「何もしなかったら、この海域の海底地形の名称は韓国名になってしまう」(政府関係者)からだ。


 調査海域は日本の排他的経済水域EEZ)内。竹島はわが国固有の領土だが、韓国が不法占拠しており、周辺海域のEEZの境界は明確に定まっていない。このため今回の調査海域には韓国が自国の排他的経済水域と主張している海域も一部含まれているという。

 これを理由とみることができるでしょう。確かにこの調査は竹島領有権問題に絡んではいますが、直接韓国と事を構えるのが主眼ではないということは言えそうです。 また、韓国自体が竹島周辺の海域を日本側の同意を得ずに測量調査してきたことは韓国メディアでは言われておりません。そこらへんも公正さを欠くと見えますね。
東京新聞社説「竹島海域調査 過剰な反応を控えて」


 しかし、韓国は四年前から日韓のEEZが重複する海域も含めて、たびたび調査を行い、海山や海盆などに独自の名前を付けた。しかも海底地形に関する国際会議に提案する構えを見せている。
 日本政府は、繰り返し抗議をしてきた。このままでは韓国名が定着し、竹島に対する実効支配がさらに強まる恐れがある。このため今回の調査実施になったのである。


 昨年、一地方自治体の「竹島の日」制定に大騒ぎしたのも韓国側だ。結果として日本国内の反韓感情を刺激することになった。
 竹島への警備隊配備など実効支配しているのに、紛争のたねをまいたのは韓国の方だ。韓国政府はこうした現状をよく認識してほしい。


 さらに韓国は、竹島問題を首相の靖国神社参拝、歴史教科書問題など「日本による一連の歴史歪曲(わいきょく)の延長線上から出てきた」(潘基文外交通商相)と決めつけている。これでは問題を複雑にするばかりだ。(後略)

 まったくもってその通り。日本側のリベラル紙と目される東京新聞ですら今回の韓国の勝手な「から騒ぎ」には批判的です。


 韓国側では「何らかの実力行使」無しには、すでに輿論を抑えられない状況になっているようにも見受けられます。以下の国民日報の記事に出てくる「特攻隊」が、すでに荒れる日本海で待っているのかもしれません。
 日 測量船 EEZ 接近の時は海警警告放送… 沮止線抜ければ特攻隊投入仏事(自動翻訳しました)

2006年 4月 19日 (水) 18:15 国民日報
日本海保安庁所属測量船が 19日午後 ドットリヒョン 坂二項で出航したという消息が伝わると政府は日本船舶の航路を注視して緊迫に対応した.
外交通商部国防省, 国家情報院 , 海洋水産省 などは出航した船舶が独島周辺海域を含んだ我が方 排他的経済水域 (EEZ)に近付く場合に備えて対策樹立に入って行ったし海警も東海上で非常境界態勢に突入した.


我が政府は日本測量船の EEZ 水路測量過程で発生することができるすべての事態に対する対応策を準備の中だ. 政府は特に日本測量船が我が政府の繰り返された警告にもかかわらず独島周辺海域に近付く最悪の事態が発生する場合武力衝突も辞さないという方針を立てた状況だ.
ソングミンス青瓦台統一外交安保政策室長は “海警が行動守則によって専門的な方式で処理すること”と言った.


海警は一応日本測量船が EEZに近付くことを阻むために警備艇で警告放送を出して警告を無視して近付く場合警備艇を利用して測量船の EEZ 進入を阻む事にした. 海上で押し出したり辞さないというのだ. 沮止線が抜ける最悪の場合にはヘリとゴムボートで特攻隊を投入して測量船の操舵室を占領,停止させた後強制で牽引する方法も排除していない.


海警は現在 5000t級参峰号を含めて艦艇 18尺を東海上に急派したし 超音速機 チャレンジャー号 度江陵空港に緊急配置した状態だ. 海警は日本測量船が独島周辺海域に近付いて来る場合参峰号で現場作戦を総括指揮するようにする予定だ. もし事態がこんな段階まで飛話されたら韓・日間深刻な紛争で大きくなることができるが政府は領土主権次元ですべての場合の数に注いでオーダーメード型対応策を行うという方針だ.


ソング室長は日本政府船舶である測量船に対する拿捕などの行為が UN海洋法協約 に相反するという一部指摘に対して “法的検討を終わらせた”と言った. 政府船舶としての気品と該当国家に対する礼儀を守りながら公務を遂行する時政府船舶としての位置を持つことであり,それを越せば対応が不可避だという論理だ.
しかし政府は現在今度事態を解決することができる最善の方法は日本側が測量計画を撤回するというのにあると思ってすべての外交的努力を集中している. 戦争時にも外交は成り立つ位すべての可能性は開いておくという意味だ.
ナムヒョックサング記者 hsnam@kmib.co.kr


 自分に自信がない者ほど自らに絡む事案で大騒ぎするのは個人も国家も変わりないということでしょうか。日本側がこれから外交手段で衝突を回避しようとするのには賛成ですが(つまり海底地名問題で韓国側が勝手な主張をするのを取り下げる代わりに調査を延期するなど)、目的とする当該事態に譲歩が得られない場合、調査を継続するというのが外交としては望ましい手法だとも考えます。
 朝鮮日報が言うように、韓国側の軽挙があればそれは日本を利するものなのですから。


 しかし日本との戦いは海上で繰り広げられるだけではない。国際社会という舞台でも同時に進行する戦略と戦術を要する戦いでもある。日本の調査船は国際海洋法の漁船と同じような民間の船舶ではなく、政府の船舶に分類される。海洋法では政府船舶は領海内でも拿捕(だほ)できないとされている。したがって、海洋警察が日本の船舶を拿捕する場合、日本は直ちにこの問題を海洋法裁判所に持ち込むだろう。そうなると独島とその周辺海域は国際社会において紛争地域として浮上し、拿捕行為に対する判決結果も日本に有利になる可能性が高い。日本の挑発戦術はこのようなシナリオを基にしている。海洋法の専門家は、船団を組んで日本の船舶を押し出すやり方で日本の調査船の問題水域への侵入を事前に断つとしても、拿捕のような措置は避けるのが賢明だと指摘している。


 日本は独島問題を最終的に国際司法裁判所に持ち込むロードマップを以前から描いている。そしてその中間段階の戦略は、日本が提訴しても韓国が応じなければ訴えが成立しない国際司法裁判所と異なり、日本の提訴だけでも裁判できる海洋法裁判所を活用するのが狙いだ。今回日本の独島近海の測量活動は、このような罠を事前に仕掛けておくやり方だ。韓国側の対応がこのような罠にはまることだけは必ず避けなければならない。(後略)
朝鮮日報 上記社説)

 それにしても隣国の政府やメディアが「陰謀論」一色だと、もう何を言っていいものかわかりません。事態を静観しましょう。


※ Soredaさんがこの件に関して扱っているCBCニュースの記事を見つけられていました。
Disputed islands stir tensions between South Korea, Japan

追記

 経緯や状況分析で、こちらのサンスポの記事が良いように思いましたので追加してご紹介。
竹島不法占拠の韓国が周辺の海底地形に勝手に韓国名付ける

さらに追記

 フランスのル・モンド紙でもこの事態を採り上げているのを見つけました。
 La tension monte entre le Japon et la Coree du Sud pour une dispute territoriale maritime
 深く突っ込んではいませんが、双方の政府関係者の主張を紹介の上、今までの経緯とか関連する日本海―東海問題などにも触れています。韓国側がかつての「植民地支配」の扱いに対する反発で、教科書問題に続いてこの竹島の帰属問題に拘っているというような表現はあります。
 それでも最後にドイツでの海洋国際会議に言及しているところはさすが。そして、

  les îlots de "Takeshima"

 問題となる島に「タケシマ(小)群島」という表現が用いられていますね。