エンプティーカロリー

 「ビール腹」って実在するのか?

「アルコールのカロリーは1gあたり7kcal。でもそれは熱として発散されるので、基本的に体に溜まるものではないんですよ。もちろんお酒にはアルコール以外の成分も含まれていますので(特に醸造酒には)、その意味では体に溜まる、即ち、太る要素もあると言えますが、飲む絶対量からするとたいしたことではありませんね」

 これは2000年頃から聞かれていたエンプティー・カロリーのことを言っているのでしょう。しかしこのエンプティー・カロリーは、直感的にそこから受け取れる「魔法のような」結果は私たちにもたらしてはくれないということだったはずです。


 エンプティー・カロリーとは、アルコールが他のカロリー源に比して代謝産物を身体に貯蔵せず、代謝の際の発熱(体温上昇)などでほとんど熱量を使い切ってしまうことから「空っぽの(中身のない)カロリー」であるとする考え方です。
 この考え方が広く知られるようになったのは、どうやら『あるある大事典』第一期の第37回放送で、女子栄養大学の三浦理代助教授の話として「ビールの大ジョッキ、蓄積されるのは89キロカロリーだけ」ということが言われたことから、とされているようです。


 しかしこのエンプティー・カロリーが、いくらお酒を飲んでも太らない…というように解されることは間違いだと、その後折りに触れ何度も私は聞いています。もちろん最初に挙げた記事でも「おつまみ」のことなどに触れていますが、まず何より、アルコールのカロリーが体温上昇として消費され脂肪として蓄積されずにいても、本来アルコール以外のカロリーとして使われて熱になるはずだった物質が、このアルコールによるカロリーの代わりに蓄積されることは確かでしょう。
 したがってエンプティー・カロリーと言うのはアルコールのカロリー(消費)だけに注目して言われるものであって、人体全体のカロリー消費の収支としてはここでプラスがある以上、決してそれはゼロになってはいないと言うことですね。
 もっとも、アルコール摂取によって得られたカロリー分だけ体温が上昇して発散するということにでもなれば話は別でしょうが、確かに身体が火照って汗をかくとはいえ(その分だけは平熱の時より多い消費でしょうが)平熱を極端に超える体温にならないのですから、結局アルコールでも「太る」ということは免れないのです。


 こんな記述もありました。

 人間は食事を行うと体が熱くなるように熱としても利用されます。これを「食事誘発性体熱生産(DIT)」と言いアルコールは体熱生産率が非常に高いのです。
 実際に活動源に使われる割合はビールなら40%から45%。ワインなら20%前後です。しかし、アルコールは腸ではなく直接、胃壁から吸収されるため、食事と一緒に取ると吸収されるカロリーも高くなる弱点があります。


 人間がそんなに便利になれるわけ…ない(涙)