なぜ捨てる？本を売る？
千葉中央署は２１日、他人の土地に大量の学術書を捨てた廃棄物処理法違反（不法投棄）の疑いで、住所不定、無職の男（５４）を逮捕した。投棄された本の中には古本でも１万円以上の値が付く高価な本も含まれていたという。捜査員は「捨てるくらいなら、売って生活の足しにすればいいのに」と首をかしげている。
調べによると、男は２１日午前１時ごろ、千葉市中央区新千葉の民家の敷地に学術書約１５０冊を不法に捨てた疑い。約３カ月前から民家向かいの廃アパートに無断で居ついていたが、アパート所有者から立ち退きを求められ、「どうしようもなくなって捨てた」と供述している。
不法投棄されたのは、日本語の哲学書、宗教書のほか、古代ローマの博物学者、プリニウスの「博物史」などの洋書。男は芸術関係の有名大学を卒業後、植物学などに関する学術書を独自に研究し、植物辞典のような物も自ら編纂（へんさん）していたという。（後略）
(Sankei Web 地方＞千葉県内のニュース 09/23 01:19)
何か深い絶望があったのではないでしょうか。
ただとにかく捨てたかったのではないかとも感じます。
売るとか生活の足しにするとかいう発想がでないくらい、この人は自分の蔵書に愛憎入り交じった気持ちを抱いていたのではないかと。勝手な想像なのですが…。 私にはこの人にとってのこの学術書が、坂東さんが飼い猫に産ませた子猫よりも、この人のプライドとか喜びとか苦しみとか悲しさとか、そういったもろもろの人生、生活に深く関わっていたのだと思えてなりません。
だから、この人はある意味本当に自分を殺していたのではないかとも見えてしまうのです。もしそうなら悲しいことですね。
私は本は売れない方です。むしろ近くの他人の土地に落ちていたら、状態の良さそうなものなら選んで拾ってきます。でもあくまで今までの暮らしがそれを可能にしていただけで（住居もだんだん広くなりましたし、何とか職も得ていますし）、この先はどうでしょう。知り合いの少なくない人たちは震度５がくればまあ間違いなく本に埋まって死ぬような住環境でした。彼らもこの先それをどうするでしょう。
もちろん本に有効に生きて欲しい、活かして欲しいと考えるなら売るのが最善なのでしょうが、この方は愛着があるから他人に遣りたくないと思われたのかもしれませんし、同時にどっか行っちゃえとも思われたのかもしれません。何か妙につらい話です。
