ぶどう酒が水になった話


 ぶどう酒で有名なフランスのある村に、一人の長命なおじいさんがいました。そのおじいさんが百歳の誕生日を迎え、村の皆でお祝いをあげようということになりました。貧しい村でしたがみな気の置けない付き合いをしていましたので、知恵を絞って次のようなプレゼントを考えました。それは皆で一杯ずつぶどう酒を持ち寄って、おじいさんの好物のぶどう酒の樽を贈るというものです。


 村の中央の広場に大きな樽が置かれました。人々はそれぞれ家から持ってきたぶどう酒を樽に注ぎ入れ、次の日の朝までに樽はいっぱいになりました。
 村の男二、三人がその樽を担いでおじいさんの家へ行き、おめでとうとぶどう酒の樽を渡しました。おじいさんはことのほか喜びました。皆貧しい暮らしをしていることを知っていたからです。ありがとう、ありがとうと涙を流しました。


 次の日、さっそくいただいたぶどう酒を飲もうとおじいさんが樽の栓をひねってカップに注いでみると、それは混じり気のないただの水でした。おじいさんはひどくがっかりしてしまいました。


 なぜぶどう酒が水に変わったのか、もうおわかりですね。