バーミヤンでの経典の発見について

 この一月にちょっと気になっていて、でも書かなかったネタを一つ…


 こちらの記事「世界最古「大乗経典」発見 成立当初のガンダーラ語」が「はてなブックマーク」で少なからぬ注目を受けていたのを目にしましたが、なぜ今(さら)この情報が新聞数紙に採り上げられていたのか、に興味を持ちました。

 アフガニスタンバーミヤン渓谷(バーミヤン州)の石窟寺院跡から1990年代に見つかったとされる仏教経典の写本の中に、2〜3世紀に書写された賢劫経(けんごうきょう)と呼ばれる大乗仏教の経典のひとつがあることが、佛教大学京都市)の松田和信教授(仏教学)の調査で分かった。大乗仏教中央アジアを経由し中国や日本などに伝わった仏教で、中国・新疆ウイグル自治区のホータン近くの仏教遺跡からは5〜6世紀の写本が発見されているが、今回の写本はこれより約300年古く世界最古。大乗仏教の成立などを研究する貴重な資料という。(以下略)


 2003年にNHKで放映されていた「文明の道」というNHKスペシャルのシリーズを憶えていらっしゃるでしょうか。このシリーズの第三集、2003年6月15日(日)放映の「ガンダーラ 仏教飛翔の地」において、この経典の発見および「六波羅蜜」という言葉が見つけられたことがすでに言われていました。
 しかも番組中ではその言葉の発見者としてカローシュティー文字の第一人者であるアメリカの歴史学者リチャード・ソロモンのインタビューもあり、なぜ少なくともそれから3年半も経ってから、ソロモン氏の名前無しにこのニュースが「新聞」に採り上げられたのかすごく不思議でした。


 当該の経典はガンダーラ地方の西の端、バーミアンの洞窟から(2003年の数年前にすでに)見つけられていたもので、その一万点以上の仏教経典はノルウェーの富豪が(コレクターとして)買い取り、それがノルウェーの首都オスロにある「科学アカデミー高等研究所」において研究されていると番組では語られていました。
 その研究にはノルウェーアメリカ、日本など11カ国の研究者が集まり、確かにそこに佛教大学の松田和信氏もいらっしゃいました。でも松田氏は番組ではメインの発見者という取り扱いではなかったですね。


 先の番組中で触れられず今回の記事で新しく出ている情報は、その仏典の断片が「賢劫経」の内容であると比定されていることぐらいです。それを同定するのに松田氏の力が与っていたということなのかもしれませんが、いかにも旧聞に属するものをいまさら…というのが率直な感想でした。