慰安婦問題のアメリカ議会調査局報告書

 Congressional Research Service Memorandum April 3, 2007
 SUBJECT: Japanese Military's "Comfort Women" System (pdf)
 ざっと上記資料に目を通しただけですが、下記の日韓の新聞記事は(韓国紙のは梗概だけですが)互いに嘘はついていないけれど、やや都合のいいところをピックアップして書いているという感じはあります。


産経新聞 ⇒「組織的強制徴用なし」 慰安婦問題 米議会調査局が報告書

朝鮮日報 ⇒「強制動員の証拠は明白」=慰安婦問題で米議会報告書−韓国紙
(時事が伝えた朝鮮日報のこの記事は、まだ日本語版に訳されていません ↓下に追記)


 認識を新たにした点:
 この報告書が問題にしているのは「慰安婦システム」でした。つまり慰安所を置いて兵士たちに女性をあてがっていたのは日本軍だというその機構全般を問題視しているということです。
 慰安婦の徴募が強制であったか否かということはむしろ枝葉の問題になっているのではないかと思われます。"voluntarily or involuntarily"という言葉が何度も出てきます。業者の斡旋した慰安婦の人たちはビジネスだから…という視点はないですね。最初から問題をここに捉えていたかどうかはわかりません。でも少なくともシステムの問題ということでしたら、それを否定することは難しいでしょう。
 この点で極めて向こうには安倍総理の主張が的外れに見えているはずですし、現に彼を批判する色調は弱いものではありません。強制的に女性を集めたのでなければ問題ないと思っている向きには、早く認識を改めないと齟齬は拡がるばかりと申し上げたいです。


 ※ただしこういう視点で「抑圧的に性的関係をもたせられていた女性たちの悲惨さ」を取り上げるならば、それはすでに日本軍がどうこうというスパンは超えていると思います。むしろこれはより普遍的な「身を売ることを余儀なくされた女性」の問題で、日本軍が慰安婦システムの責を免れないにせよ、それだけを問題視し責めるならばそれはきわめて「政治的な正義」と言わなければならないでしょう。


 疑問に思った点:
 この報告書が採用している資料の偏りが反映しているのか、日本人慰安婦はいなかったかのような記述です。つまり慰安婦問題が、日本軍による占領地・支配地などの女性を使った性的慰安システムの問題になっているのです。これで相当印象が違ってくるはずです(私は多数の日本人慰安婦を含んだ問題だと認識していました)。

These women were given the name "comfort women." Most estimates of the number of these "comfort women" range from 50,000 to 200,000. A sizeable plurality or a majority of them were Korean. Chinese, Taiwanese, Filipino, Dutch, and Indonesian women made up most of the rest. (p.7)

 強制されたオランダ人女性と比べられないくらい(むしろ朝鮮人女性と同じかそれを上回るぐらい)の日本人慰安婦の方がいらっしゃったならば、この問題はアメリカでも「対外的な日本軍の非道さ」をならすものではなくなるはずです。少なくとも私はどこかでそういう資料(二次資料ですが)を拝見していました。
 この報告書の認識(と言いますかこの報告書が参考にした資料のそれ)が正しいのか、それともそこが誤っているのかでこれは相当に問題の見え方が異なってくるはずです。私はここがポイントだと思います。


※もし慰安婦の方々の国籍と申しますか比率(特に日本人女性の割合)をご存知の方がいらっしゃれば、資料を教えていただけないでしょうか。それによってアメリカかあるいは私が、慰安婦問題の認識を改めることになろうと思いますので…

追記

 朝鮮日報日本語版で関連記事が訳されました。ただ、まだ報告書への言及はありません。
 慰安婦:安倍発言で米日関係に異常な兆候=米議会調査局
 (2007/04/13 07:25:16)