ユニオンに関する二つのケース

 一月ほど前に、茶髪を理由に解雇されかけた女の子がユニオンの力を借りて解雇を撤回させたというニュースがありました。
 16歳「茶髪」少女 バイト先からクビ通告 個人で労組へ

 ビジュアル系バンドや少女漫画が好き。そんな16歳の少女が、髪の色を理由にアルバイト先の店長から突然、クビを通告された。「納得できない」。彼女は闘うことを決めた。個人加盟できる労働組合(ユニオン)に入り会社と交渉、撤回させた。

 状況をどう認識するかが意見の分かれ目のようで賛否いろいろな意見がありましたが、ここで得られる限りの情報からは、私は辞めさせられずに良かったと思えたほうです*1


 ところがこれに類似した一つのケースが別に提示され、そこでもユニオンの力を借りて勤め先からの解雇を回避した女の子がでてくるのですが、今度はその人に同情的になれないという感想を抱きました。
 『風の旅人 編集便り〜放浪のすすめ〜』の「人生の歯車」という記事です。
 かいつまんで言いますと、無断欠勤が重なったある女性が解雇をほのめかされ、ユニオンの助けで解雇を回避。でもやはり辞めてしまったというケースです。これに対してkazetabiさんは

 自分の無断欠勤が原因で、「もうやめてもらってけっこうだよ」と言われてしまい、それでも解雇されたくないのなら、何とかユニオンに相談するよりも前に、「今後二度と無断欠勤しませんから、働かせてください」と謝罪して心を入れ替えた方がいいのではないだろうか。そのように真摯に謝れば、上司だって、もう一度チャンスを与えようと思うだろう。

 と考えられ、

 なんとかユニオンも、集団で押し掛け、彼女の力になってあげたと誇らしい気持ちになっているのだろうが、それは自己満足にすぎないのではないだろうか。というのは、なんとかユニオンは、彼女の人生の全てにおいて責任を請け負ってくれるわけではない。この瞬間の”権利獲得”に浮かれるのはけっこうだが、そのことが本当に彼女の将来のためになると私は思えない。何とかユニオンは、果たして彼女の将来のことまで心配してくれているのだろうか。

 というように苦言を呈されています。(詳細はどうか上記サイトの記事をごらんください)


 おそらく両ケースで「ユニオン」の人は同じような対応を取っているのではないかと思います。それなのに自分の心証がこれほど違うのはなぜかと考えてみました。もちろん記述者の考え方の違い、描写の違いに左右されてしまっているところもあるのは否めませんが、大きなポイントになっているのは女性の側の勤めに対する誠実さの違いというものの印象なのかなあと思います。
 茶髪は趣味と考えて、勤めをまっとうするためには「染め直し」をすべきだったとお考えの方が、前回否定的なご意見をお持ちだったのでしょう。私はアルバイトの若い子のおしゃれは、接客業とはいえ勤めに決定的に影響するものではないだろうと、茶髪をどう捉えるかという程度問題として考えていたんですね。
 そしてその「程度問題」として考えても、繰り返される無断欠勤・遅刻は「勤め」に対して真面目ではないというはっきりしたサインではないかと思えるのです。ならば、予告のうえ辞めてもらうことはありだろうという感覚です。


 非正規雇用という弱い立場だから…という大づかみでしか判断しないのは、やはり粗い議論になってしまうと思いました。面倒でもケースバイケースで判断しなければならない類の問題なのでしょう。
 kazetabiさんのおっしゃることは大人としての一つの正論で、自分と全く重なるとは言えないのですが大きく考えさせるものを持ちます*2


 自分にかかわる人の一人一人の「先」までみた関わり方ができているかどうか、それはなかなかできるものではないというのが自分を省みて思うことです。大人としてできることはした方が良いだろうという「正論」を、時々糧にしていかなければなあと感じました。それがなかなかできるものではないだけに、ちゃんとそうした態度があるということを思い出すためにです。

*1:私なら髪を染め直してしまうだろうと思うのですがそれはおいといて、ここでは茶髪が辞めさせる決定的な要因になるのかというのが一番の疑問で、前の店長の時には大丈夫だったというならここでオオゴトにするのは…というのと、せめてバイトの契約期限まで雇用を継続するのが筋ではないかという感を持ったからです。それ以外の勤務態度に問題はないのならクビはやりすぎで、そういう意味では外部から助けが来て良かったねという感じでした

*2:私は、むしろユニオンは機械的に同じ対応をしても良いと思います。ただし、会社側の説明にも聞く耳を持って、この場合でしたら会社と女性の仲介役として働いてくれたらと思ったのでした。つまり今後繰り返さないことを女性側に約束させて、そのかわりに雇用の継続を会社に説得するというような