セクハラが脚光を浴びた元

 おそらくThe U.S. Equal Employment Opportunity Commission(EEOC 米国雇用機会均等委員会)のガイドラインがセクハラを注目させた元なのだと思われます。


 Sexual Harassment(EEOC, 1980)


 もちろんそれ以前からもセクハラ行為は職場などにもあったのですが、これが何故きっかけになったかと言えば、これを契機に従業員のセクハラについて雇用している組織の責任が問われるようになったからです。

 企業責任の法理については、日経連広報部編『セクシュアル・ハラスメント』のなかの「アメリカの判例にみる使用者責任(奥山明良)が、分かりやすい。
 「従業員が職務遂行の過程で行った行為により、(従業員を含む)第三者の権利を不当に侵害した場合には、使用者はたとえ当該行為を命じなかった場合でも、共同責任を負う」という「代位責任(vicarious liability)の法理」(一六四頁)が、アメリカの判例でセクハラに適用されるようになった。
加藤尚武『応用倫理学のすすめ』丸善ライブラリー、pp.126-127)

 弱者を救いましょう、差別をなくしましょうという呼び掛けが人びとに影響したというよりも、雇用側が共同責任*1(=joint liability)を問われるようになってセクハラ対策が急速に進展したというのが事実のようです。アメリカの裁判では損害賠償が冗談のように高額になることもしばしばですから、企業などは自己防衛策の一環としてセクハラ対策に注目せざるを得なかったということなのでしょう。

*1:同時に無過失責任でもある