高島易断の話

 高額商法に停止命令 「高島易断総本部」を行政処分というようなニュースがメディアで採り上げられていますが、これは処分がなされる直前に情報がリークされて話題になっていたようです。
 「2年で死ぬ」と高額商法 通称「高島易断総本部」

 「高島易断(たかしまえきだん)総本部」を通称とする宗教法人が、易の鑑定を受けた相談者に「2年後に死ぬ」「子供が幸せになれない」などと説いて困惑させ高額な祈祷(きとう)や仏具購入を勧誘し、トラブルが起きていることがわかった。有名な高島易断の名前を使った悪質な開運商法ともいえ、経済産業省は、根拠のないことを吹き込んで商品を買わせたり、相手を困惑させた状態で契約したりしていることなどが特定商取引法違反にあたるとみて、26日にも一部業務停止命令を出す。宗教団体への同法適用は初となる。
(中略)
 関係者によると、総本部の鑑定士たちは、鑑定所や臨時相談所を訪れた人たちに、最初は2000円で鑑定する。数十分かけて家族関係や自身の過去の病歴などを詳しく聞き出し、おもに不安要素を話題にして「このままでは2年後に病気になり、お墓に入る」「因縁を取り払わなければならない」などと、1時間半から2時間かけて説明し、相手を不安にさせるという。


 さらに「取り払う方法はあるが、これは別の鑑定が必要だ」として「特別鑑定料」を要求。寺での祈祷や石塔・仏具の購入を勧め、「供養塔を建てて祈願すれば因縁を取り払うことができる」「今やらなければ1、2カ月後にあなたの命が消える」などと説き、高額な費用を払わせるという。一人あたりの被害額は最大で約900万円になるとみられる。
(中略)
 各地の消費生活センターには、「多額の金を払ったのに病気が治らない」「事態が改善しない」などの苦情が寄せられているという。
asahi.com 2008年03月26日)


 この宗教法人「幸運乃光」は高島易断を名乗るのですが、易聖と呼ばれた高島嘉右衛門はおそらく苦々しく思っているのではないかと思います。

 なお高島嘉右衛門の占いの的中率は抜群であったため、「高島」「高島易断」を名乗りその名声を利用したものが続出し、現代でもそれを名乗る団体は色々出ているが、いずれも嘉右衛門とは関係なく、高島長政も「高島易断」を名乗って高島家縁者や門下生を装うのは迷惑至極であると語っている。また「呑象」の号も嘉右衛門門人の小玉卯太郎に黙認しているだけであった。

 占いそのものを商売とすることを戒めていたとされ、皇典講究所で講演した『神道実用論』の中にそれを表していると言われている一文がある。


 「其名巳(すで)に『うらなひ』(不売)と云ふが故に、決して金銀等の礼謝を受けず、実に神易を以て神明に通信するを本分の職務とするときは、始めて神官の名称にも副(かな)ひ、人の信用浅からざるべし。」
Wikipedia高島嘉右衛門」の項より ※強調は引用者)


 また「高島」の名に関しては知財関係で面白い判例があるようです。株式会社高島易断総本部として平成になってから登記された会社(今回の宗教法人とは違うところ)が、他の高島易断の名を使って易占業務をしているところを「不正競争行為」だと訴え、名前の使用を差し止めようとした裁判です。
「知的財産権速報」保管庫・パイロット版より)

◆H11.12.27 東京地裁 H6(ワ)11157 営業表示不正競争等

2 以上のとおり、高島嘉右衛門は、「高島易断」を著し、「高島易断」と称する易占を創案したが、同人の没後ころから、同人の縁者ないし門下生ではないにもかかわらず、「高島(高嶋)」ないしは「高島易断(高嶋易断)」を含んだ名称を使用し、また、右各名称とともに、「総本部」ないしは「本部」付して、易占業を行う者が、多く存在するようになった事実経緯に照らすと、「高島(高嶋)」ないし「高島易断(高嶋易断)」は、易占業そのもの、ないし易占業の組織、団体を指す一般的な語であり、また、「総本部」ないし「本部」も、組織、団体の中心的機関という一般的な語であり、いずれも、特別な意味はないと解するのが相当である。

 つまり「高島易断」はすでに一般的な名称なので、誰が使っても文句はつけられないという判断が為されているんですね。


 京都の蹴上からちょっと山科に向った山の上の方(日ノ岡のあたりだったか)にも確か高島易断を名乗るところがありましたね。あそこが本家なのかなと何となく無根拠に思っていましたが(確か高島暦の小冊子を出しているとか聞いていましたので)、暦の出版・販売はともかく、『うらなひ』(不売)を旨とするのが高島嘉右衛門の本心であったなら高島の名を以って易断をお金を取ってやっているところはどれも本物ではない…ということなのかもしれません。


 悪質な騙し商法、怯えにつけ込んだ詐欺まがいの宗教商法にはどんどん業務停止がかけられていけばいいとは思いますが、それにしても占いや拝み屋さんに頼んで験が無い時に「消費生活センター」に駆け込むというのも何だかなあと感じないでもないです。
 特に占いは、あたるも八卦あたらぬも八卦を承知の上でのお願いだと思うのですが…。