事件

 この一週間は国内でも滅多に聞かれないような殺伐とした事件が相次いで起きました。往々にしてこういう時は事件が多発したというより類似の犯罪の報道量が増えたのだとも言われたりします。それも一理あるかもしれませんが、特に荒川沖駅での殺傷事件と岡山駅での突き落とし事件は何か虚無的な、通り魔的事件という感じを与えるもので、これらが連続したことで何が起こっているのかという不安感が大きくなったものではないかと考えています。
 これらの事件は容疑者がどちらも若く、また殺すのは「誰でも良かった」という供述が漏れ伝わり、直接の動機なき殺人といった様相を見せています。まだまだ情報も少ないのですが、産経で少し重要かと思われる次のような記事がありました。
 「誰でもよかった」−岡山駅突き落とし殺害少年 デブといじめられた小中時代


■小中時代はいじめられっ子
 「くさい」「デブ」。


 少年の一家は阪神大震災で被災し、兵庫県尼崎市から大阪府大東市に引っ越した。しかし、大柄だった少年は新しい環境になじめず、小中学校を通じて同級生からたびたびいじめを受けた。


 同級生たちは、体格はいいがおとなしい少年を“格上(かくうえ)狩り”と称していじめの標的にした。テレビゲームのキャラクターになぞらえ、「マスター」と呼んでからかった。体育の授業後、少年の汗のにおいを「くさい」などとはやしたてた。少年は時には、イスを投げつけられたりもしていた。


 「女子生徒にセクハラをした」。少年はそんな言いがかりをつけられ、体調を崩したこともあった。学校では1人でいることが多く、休み時間は読書をして過ごすことが多かったという。


 担任だった男性教諭は、少年について「目立たない存在だが、気持ちが優しかった」。同級生の一人は「自分から人に接するのが上手じゃなかった。だれにも相談できず、爆発して事件を起こしたのでは」と推測する。(後略)
 (MSN産経ニュース 2008.3.29)

 なぜかこのニュースへの注目度が薄いような気がします。もちろん単に「いじめられっ子が切れた」事件というように図式にはめてしまって「消費」されるのも危惧しますが、事件が急速に風化してしまうのもどうかと個人的には思えますし。
 断片的に見たこの容疑者のお父さんのインタビューですが、あまりにまともな人で驚かされた印象があります。さらに言えばこういうお父さんからただの粗暴な子供ができるだろうかという感想もありました。あのインタビューで事件に対する見え方が何か私にとっては違ってきたのかもしれません。


 取り敢えず今はこうして書きとめておくだけです。ただ同情するとか罪の情状を考えるとかではなく、それこそ犯した通り魔的犯行は許されるものではないと思いますが、荒川沖駅の容疑者のこととともに何か考えるきっかけになるような気はします。