韓国でのリレー騒動の現地レポ

 韓国ソウルでの北京オリンピックトーチリレーの騒動と混乱について、友人が現地で体験したことについてメールをくれました。ここには報道ではわからないようなことも書いてありましたし、とても興味深いものでしたので、本人の承諾を受け、こちらでも紹介したいと思います。
(※メール内容は以下に。内容の一部は、友人本人が国内の掲示板にすでに書き込んでみたそうですが、反響はいまいちだったとのこと。特に国境なき記者団フォラツェン氏の韓国での動きや、そして何だか不当に拘束されてしまっていたことなど、今までの日本の報道では聞こえてこなかったことなどが書いてあり、もっと注目されてもいいと私は思いました)

1 オリンピック公園 「慰礼城通りにNice 暴徒を見た」
 まずは、スタート会場であるオリンピック公園に行ってみました。午後2時にスタートとのことですが、2時前頃には既に公園は中国人と思しき人々(留学生らしい若い人が中心)で一杯です。1万人という話もありますが、それも大げさではないくらいで、千や2千ではなく、どう見ても5千人以上はいると思えました。大きな五星紅旗で溢れかえっているその光景は、まったく韓国とは思えません。韓国の旗はほとんどなく、時々あっても、申しわけ程度の小旗です。


 大きな旗を振ってたり、旗を羽織ってる人間は、おそらくは中国人なのですが、韓国人は申し訳程度しかいないようです。わたしみたいな野次馬外国人がちらほらと居るのですが、韓国人は外国人より少ないくらいです。

 スタート地点まで近づいてはみたのですが、あまりの人だかりに、開会式を見るどころではありませんでした。まったく見えませんw 人垣の向こうで何かやっていることは分かるのですが……


 ここでリレー「観戦」はあきらめて、北京五輪反対の抗議運動を探してみました。
 公園の中ではなく、公園と道(慰礼城ギル)を挟んだ向かい側で、ようやく抗議集団をひとつ見つけました。よく見るとフォラツェン氏も居たので、そちらにギャラリーとして参加してみました。
 ギャラリーはわたしのような外国人の他は、プレスと私服警官と思しき人々、あとは通りすがりの韓国人でした。一般韓国人の中国人権問題への関心は、思った以上に低い印象がありました。


 抗議グループは韓国人の人権活動家と外国人の混成集団に加え、退役軍人のお爺さんが加わっているものでした。脱北者と思しき人もいます。総勢100名ほどで、半数はお爺さん方です。たくさんあるプラカードには、チベット問題もあり、脱北者問題もあり、総じて中国の人権状況を非難するものでした。いちばん基本的なシュプレヒコールは、“Chinese Government, No human lights! No Olympic!!” というもの。


 そうこうしている内に、どうやら目の前の道路をトーチが通過して行った模様です。まぁ、車両や警備の陰に隠れていて、聖火自体を目視することはできなかったのですが……


 ここからが問題だったのですが、聖火を送り出した中国人集団が、こちらを見つけて津波のように押し寄せてきました。その数、およそ数百人。


 冗談ではなく、まさに津波です、ピンチです、Nice 暴徒です。  
(二行省略)


 目の前で機動隊との激しい押し合いが始まったのですが、しかし、中国人留学生はわりと簡単に阻止されてしまいました。まぁ、所詮一人っ子政策の小皇帝ですから、数で勝っていたところで、訓練を受けた機動隊に勝てるわけもありません。機動隊の壁の向こうで、留学生は凄い形相で何か叫んでます。こちら側の抗議グループも、負けじとシュプレヒコール


 ところがここで、中国側が抗議グループに物を投げ始めました。もう、中身入りのペットボトルなんかがこっちにバンバン飛んできます。しまいには、金属性の棒(旗の柄?)まで飛び交う始末です。わたしはコレを手に喰らってしまいました。


 「こんなモノ投げんなよ」と思っていると、退役軍人のお爺さんが速攻で中国側に投げ返してくれましたw 欧米人の活動家は「こんなものが投げられてきました、許せません!」みたいなアピールをするのですが、さすがに韓国人です。 老いてなお盛んな黄忠を見るようです。


 しまいには、もっと凶悪なモノが飛び交っていたようで、こぶし大の石や、どう見ても1kg以上はありそうな金属製の工具(チェーンを切断するようなもの)が飛んできたそうです(抗議グループの主催者発表なので、わたしは実物が飛んでるのは見てないですが)。プレスのおじさんは巻き添えを食ったようで、何か重いものを喰らって頭部から流血してました。


 そうこうする内に、中国人留学生は完全排除されてしまい、小康状態です。 韓国人人権活動家(牧師さんかもしれません)が、投げられたものをまとめて、プレスに色々訴えていました。


 何やかんやで、3時過ぎには抗議集会は解散させられてしまいました(警察の指導っぽかったです)。夜7時からソウル市庁で次の抗議行動があるとの事で、わたしもいったん帰宅しました。

 ここまでが前半です。今日、夜にはまた連絡が入るので、そこらへんで内容に間違いがないかなど確認できるものはします。もし御質問があれば(内容によっては)取次ぎも考えておりますので、よろしければコメント欄にどうぞ。

2 ソウル市庁 「フォラツェン不当拘束」

 夜7時前にゴール地点の市庁に行ってみると、予想通り、市庁前広場は赤一色です。五星紅旗の赤というところが、普段のイベントとは違うところでしょうか。嬉しそうな穏やかな顔をした若い中国人留学生を見ていると、この中に昼間のNice 暴徒が混じっているとは、とても思えません。昼間の経験は、何か幻だったかのように思えてきます。


 特設ステージで何かやっているのですが、やはり人だかりでよく見えません。抗議グループを探して歩き回ったのですが、あまりの中国人の多さに、移動するだけで一苦労です。沿道を見ると、沿道も赤い旗で一杯です。ここは、どこの国なんだろう……


 ようやく抗議グループを見つけたのは、広場をかなり離れた路地でした。どう見ても、混乱を避けるために隔離されているとしか思えません。


 夜の部の抗議は7〜8人でやってました。韓国人と外国人とが半々くらいの割合です。脱北者と思われる小柄な若い女性が、とてもがんばっていました。もちろん、フォラツェンも。


 私服警官とプレスを除けば、あまりギャラリーは居なかったのですが、懸命にシュプレヒコールで訴えています。


 予想通りといいましょうか、リレー閉会式が終わると、シュプレヒコールを聞きつけた中国人留学生がわらわらと集まってきます。またもやNice 暴徒です。そしてまたもや、機動隊が阻止。ほとんど様式美の世界です。


 ここで、投げられた中身入りのコーラのペットボトルが、外人さんの顔に直撃。外人さんはやはり投げ返したりせず、ペットボトルを掲げてアピールしてました。


 それにしても、中国人留学生たちの激高した形相は、凄まじいものがあります。また、憎悪や敵意を皮膚感覚で感じられるような場面は、日本ではあまり経験したことがありません。群集心理とでも言うのでしょうか、これは非常に恐ろしいものです。


 機動隊を間にして、抗議派と中国人とでシュプレヒコールの応酬をしてたのですが、7時40分か50分頃、私服警官10数名が突然、フォラツェンを含む数名(全部で2名か3名)を拘束して無理やり連行して行きました。フォラツェンは猛烈に抗議してましたが、私服警官は全く聞く耳を持ちません。


 混乱を避けるためとか政治的配慮とか、色々あるのでしょうが、こんなものは不当拘束以外の何物でもありません。


 信じられない光景を目の当たりにして、みんな茫然自失です。夜の部の抗議活動は、無理やり散会させられる形になりました。


 ちなみに、フォラツェンの不当拘束は韓国のTVでは報じられてないように見えます。
 この団体のニュースの絵も、昼間の抗議行動のものだけしか出てきません。

 以上です。緊迫した雰囲気や、全く聞こえてきていなかった「夜の部」の騒動などなかなか貴重な声だと思えたので、ここに紹介させていただきました。